第1191冊目  「他人が読める」と面白い [単行本] 渋谷 昌三 (著)


「他人が読める」と面白い

「他人が読める」と面白い


単純作業でも工夫する人は、ポジティブな人である


マニュアルに従い、同じことを延々と続けるだけの仕事は、いずれ飽きてしまいます。「間違いない」がすべてを優先するような単純作業を求められると、想像以上のストレスも感じます。そこでは、自分の「思い」や「気持ち」がまったく反映されていないからです。


昔は封筒の糊づけなどの単純作業の内職をやっているお母さんたちが少なくなったと思いますが、内職は賃金も少なく、家庭内作業とはいっても、その途中で家事と子育てもすることを考えると、さぞ大変だったことだとうと思います。


現代は、内職こそ少なくなりましたが、メーカーや接客業などでは単純作業はたくさん行われています。決められたことを黙々と続けるのですから、簡単でもあっても、面白味や刺激の少ない仕事に変わりはありません。


しかし、よく見ていると、同じ単純作業をしている人でも、楽しみを見つけていると、イヤイヤやっている人がいることがわかります。


部品を取り付ける作業を行っている工場では、流れ作業なので決まったスピードを求められます。みんなと歩調を合わせなくてはいけないのですが、でも、みんなより早くできるに超したことはないわけです。


ある人は、体をあるリズムに合わせて踊るように作業することを見出したそうです。アタマのなかで歌いながら手を動かすため、他の人よりリズミカルで早く、しかも、作業を楽しめるのだそうです。


レストランで接客をしている女性は、店からいわれた挨拶用語である「いらっしゃいませ。こんばんは」を連発するのに疑問をもち、常連のお客様には「○○様、いらっしゃいませ。お待ちしておりました」と、客の名前をいうことを思いついたそうです。これは「あなたはほかのお客さんとは違います」というメッセージを送ることになります。


名前を言われた客は、その女性に親近感をもち、ちょっとした会話を交わすようになり、いろいろなやりとりをするうちに仕事も楽しくなります。


お客さんの来る回数も増え、以来、そのレストランでは、できるだけ顧客の名前を口にすることが義務づけられたということです。やる気のある人は、指示されたことに不平をもらすのではなく、自分なりのアイデアで実践し、工夫を加えているのです。