第1159冊目  “司法試験流” 勉強のセオリー (NHK出版新書 375) [新書]伊藤 真 (著)


“司法試験流

“司法試験流"勉強のセオリー (NHK出版新書)


細かく区切り何度も繰り返す


記憶を確実なものにするための基本は、細かく区切って繰り返し復習しながら覚えることです。その重要性について考察しましょう。


そもそも、一五世紀にグーテンベルクが印刷技術を発明する前までは、印刷された書物というものが世に存在しませんでした。ですから、それまで歴史や文化、信仰、伝統、技術など何でもそうですが、それらは限られた写本を除いて、ほとんど口頭伝承で語り継がれてきたという背景があります。『ソクラテスの弁明』にしても、プラトンソクラテスの言葉を聞いて書いたものですし、ブッダの言葉も、後に弟子が書いたものがお経となっています。イエス・キリストも自分で聖書を書いたわけではありません。また、古代ギリシアホメーロスの誌も口承で伝わったものですし、『平家物語』も琵琶法師の語りによって伝えられました。すべては耳で聞いた記憶をものに伝えられたものなのです。


当時は、膨大な記憶を頭の中に蓄えて伝承する語り部がいました。その人たちの基本的な記憶の仕方というのが、細かく区切りながら少しずつ物語を続けていくという方法だったのそうです。例えば最初は五行くらい覚えて、その五行を覚えたら、次の五行を覚え、一〇行を覚える。その一〇行を言えるようになったら、さらに五行加えて一五行を覚える。そして、一五行言えるようになったら、次の二〇行言えるようにする。つまり、付け足したところだけを覚えるのではなく、それまでやったところをおさらいして付け足すという方法で正確な記憶がなされていたのです。