第1131冊目  ライフハックス心理学 みるみる「やる気」と「時間」を引き出す43の方法 [単行本(ソフトカバー)]佐々木 正悟 (著)


ライフハックス心理学 みるみる「やる気」と「時間」を引き出す43の方法

ライフハックス心理学 みるみる「やる気」と「時間」を引き出す43の方法


技術を習得したいなら「習得した人」に習う


今度は、自分が続けたい習慣が「技術の習得」だとわかった場合です。


たとえば、英語の勉強をすべく一念発起したものの、「三人称単数現在なら動詞にsをつける」とか「不規則動詞の活用形」といった、覚えるのにそれなりの苦労が伴うにもかからわず、それを覚えてもすぐさま英語ができるわけではまったくない、といったことはよくあります。そうした状況が続くうちに、たいていのhとは英語の勉強などやっていられないという気持ちになりがちです。


このように、ただ単に習慣を継続することと違い、ある程度の技術をマスターしようとすれば、習慣そのものは手段でしかなくなります。つまり、「英語の勉強」という習慣は、「英語という技術のマスター」を保証しないのです。


この問題を解決するためのハックとして、もっとも手っ取り早いのは、「その技術をすでにマスターした人」を教師につけるというものでしょう。英語であれば、日本語のできる外国人を教師につけるとか、さらによいのは英語のできる日本人を教師につけることです。また、たとえ直接習うことができなくても、それができる人のそばについて、その人が実践しているのを見ることができるといいでしょう。


なお、これを「観察学習」と言いますが、観察学習が効果的であるのは明らかなのに、まったく実践されていない現場があまりに多いようです。口で教わるより、やって見せてもらう方がずっと早いことは多いのですが、「ただ見て覚える」などという安易すぎるように見えるせいか、観察学習の有効性が活かされていないのは非常に残念なことです。


英語をマスターしようとするとき、英語のできる日本人のそばにつくのがいのはなぜでしょうか。そのことの意味は、「観察学習」です。人は他人を観察するだけでも、その人の持つ技術を「コピー」できます。こう言うとなにやら摩訶不思議な話のようですが、そんなことは決してありません。たとえば人間であればごく当たり前のように、他人が石を使ってクルミをつぶしているのを「見れ」ば、自分でも石を使ってクルミをつぶそうとするでしょう。


これはあまりに単純な話ですが、実は人間以外の動物には、これが容易ではないのです。サルやチンパンジーにも、「観察学習」の能力があることはわかっています。それでも、クルミを岩でたたき割って食べているところを「見た」サルが、クルミを持って岩の辺りをウロウロしながらも、なかなか「どうすればいい」のかまではわからないようだ、というのが知られています。「観察学習」ができるというのは、かなり高度な能力なのです。


その点、人の「見て学ぶ」の能力は極めて高いので、これが活用できるなら、それに越したことはありません。だから、英語のできる日本人に学ぶ場合にも、本当は彼らが「英語の勉強をしている」ところを観察するのがよいわけです。「教わる」というのはこのうえない方法のようで、なかなか効果が上がらないことがあります。なぜかというと、人は他人に教える段になると、なぜか自分ではまったくやってこなかったような方法で、教えようとする傾向があるからです。


もうひとつ、「観察学習」の大事な点は、「できるようになる」ということが目の前で実証されている点です。この意味で、英語は外国人に習うより、日本人の場合には日本人に習うほうが、よりメリットがあるでしょう。アメリカやイギリス人が英語を話せても、私たち日本人にとっては「これで英語ができるようになる」と明らかでないからです。


同様に、プログラミングやスキーにしても、「教える人」はどのようにしてそれができるようになったのか、目の前で見せてもらうのがいちばんいいのです。同じ方法が最善の方法かどうかはわかりませんが、その方法でその人はまぎれもなく「できるように」なたからです。


英語やプログラミングやスキーなどの技術の習得が、単なる習慣より難しいのは、習慣を形成するための初日や2日目には、意味のあることを実行できているかどうかがわからないため、強い不安になるからです。その不安を払拭し、訓練を習慣づけるには、方法が間違っていないことを、「できる人」によって、まず確認しておく必要があるわけです。