第1204冊目  知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書) [新書]池上 彰 (著)


知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書)

知らないと損する 池上彰のお金の学校 (朝日新書)


保険は何のためにあるのでしょうか?


保険を一言で言い表すとすれば、「リスクに備えた助け合いのシステム」です。私たちは一人ひとり、将来に起きるかもしれないさまざまなリスクを抱え込んでいます。病気になって入院するかもしれませんし、家族を残して死んでしまうかもしれない。あるいは、事故で誰かを傷つけてしまうかもしれない。


そうしたリスクに備えて、一人ひとりが個人で対応するのは、どうしても限界があります。もちろんあり余るほどの資産を持っているお金持ちなら、個人で対応できるでしょう。でもそれほど余裕がない人がほとんどです。そこで、普段からみんなで少しずつお金を出し合っておくわけです。いざ「お金が必要だ」という人が現れたら、プールしておいたお金を使ってもらう。これが保険の基本的な考え方です。


参加する人数が集まれば集まるほど、破綻しにくい保険をつくることができます。「いざ」という状態になる人の比率が低くなるからです。一人でお金を貯めているという状態は、いわざリスク一〇〇%です。何か困ったことが起きた時は、そのすべてを一人で背負わなくてはいけません。でも二人でお金を貯めていれば、リスクは五〇%になる。負担を半分に分けることができます。もし一〇〇人集まれば、リスクは一%になる。もっと多ければもっと低くなります。これを「大数の法則」と言います。


助け合う人数が増えれば増えるほど、寿命で死ぬことにしても、病気になることにしても、破産することにしても、全体から見れば、「予測の範囲内」に収まるようになる。母数が大きくなればなるほど、より正確な「確率」を計算できる。つまり、予測できない事態が起きる比率は少なくなっていきます。そのため、リスクに対してより効率的な助け合いのシステムを作ることができるようになるわけです。


ですから保険というものは、基本的に「払ったお金が必ず返ってくる」ものではありません。これが大原則です。


介護保険料を支払ったからといって、必要もないのに介護を受けるわけではありませんね。本当は誰も介護なんて受けたくない。でも身体のあちこちが悪くなり、どうしても日々の生活を送るのに人の助け合いが必要になった時に、仕方がなく介護を受けるわけです。つまり介護保険料はあくまで、不本意に介護を受けることになってしまった時に、その金銭的な負担を減らすために支払っているのです。


このことはよく考えておく必要があります。「保険料を支払う」ということは、サーズスを購入しているわけではありませんし、投資をしているわけでもない。あくまで、リスクに備えるためのものだということです。