第1165冊目 できる課長の話し方 [単行本(ソフトカバー)]櫻井 弘 (著)
- 作者: 櫻井弘
- 出版社/メーカー: 青春出版社
- 発売日: 2010/05/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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発声・発音を練習する
もしも、「小さな声」「聞き取りにくい発音」で、課長が部下に何かを指示したり、質問したりしたならば、部下からの信頼は得られません。「自信がない」「皆に注目されていて恥ずかしい」などと考えているのかも知れません。一言で言うと、「照れ」とも表現できます。
しかし、「照れ」とは、そもそも「自分への拘り」です。あがっているときに、「あがって見られてはいないだろうか?」「自信なさげに映っているのではないだろうか?」と自分勝手に思い込んで、決めつけている姿と同じです。
つまり「自意識過剰」になっている状態と言えるのです。「見られている!」と聞き手を気にしすぎたり、自分自身に捉われたり、拘っていると、コミュニケーションでもっとも重要な「相手」や「聞き手」に目が向きません。自ず下を向いて、ボソボソと話してしまい、部下にしっかりとは届かないのです。
そこへ持ってきて、ただでさえ小さな声にもかかわらず、下を向いて話したとしたならば、声は床に向かってしまい、聞き手に届きません。いくら素晴らしい内容だったとしても、相手に届かなければ、何の意味のないのです。
そして話し方を考えるときに、「相手に届く要素」としては、大きく三つのことが求められるのです。
一番目は、内容が良いこと。二番目は、気持ちがこもっていること。そして、三番目は声がはっきりしていることです。いくら良い内容で、気持ちを込めたつもりでも、何を言っているのか伝わらない小さな声では、相手にまったく届かないのです。
はっきりした声を出す「前提条件」として「お手本になる人」を決めましょう。人間は環境の動物と言われます。たとえば、職場で「同じ話し方や似た声の人」がいませんか。仲が良かったりすると、いつも一緒にいて、話し方や口癖まで似てきてしまうことがあります。
はっきりと声を出したかったら、職場など、毎日のように顔を合わせ話す人の中で「この人のような話し方をしたい」「あの人みたいにはっきりとした声で話したい!」という目標とする人を決めてください。そして、何よりも課長として、自分自身が実行できなければなりません。
さて、その上で、発音、発声にはきちんとルールが存在するということをしっかりと認識しておきましょう。「ルールがある!」ということを、証明する実習として、まずは母音の「アイウエオ」を大きな声で発声して、その時の「口の形」や「舌の位置」を覚えておいてください。
次に、特徴的な音である「ラ行……ラリルレロ」や「マ行……マミムメモ」を発音してみて、母音の「ア行……アイウエオ」との「違い」を確認してください。
「ラ行」の特徴は、舌が上あごにくっつきます。そして、「マ行」の特徴は、上唇とした唇がくっつきます。
それでは、舌を上あごにつけないで「ラ行」を、、あた、上と下の唇をつけないで「マ行」を発音してみてください。決して正しい音が出ないはずです。このことによって、発音。発声には「ルール」があるということが証明できたはずです。
ここで、声をはっきり出すための条件として、次の三つのことをしっかりと実行してください。最初は、違和感を持ったり、思い通りに行かないはずです。だからこそ、何度も繰り返して身につけていくトレーニングが必要なのです。だからこそ、何度も繰り返して身につけていくためのトレーニングが必要なのです。それでは、実際に、「はっきりとした声」を出すための三つの条件について触れていきます。
一番目の条件は、「腹式呼吸」を意識することです。人間は呼吸をしなければ、生きていくことができません。逆に、当たり前のように、何の不自由もなく、発声しているものですので、無意識のうちに、自分流の発声の仕方が身についてしまうのです。
人と話す時にも、スピーチのときも、プレゼンテーションの時でも、我々は、水泳と同じように、「息継ぎ」をしています。ここで、問題です。
「皆さんは、人前で話す時の息継ぎを、どの部分で行っていますか?」
この質問をすると、殆どの人が首を傾げます。即ち、普段話す時に、意識して呼吸をしていないということになります。
答えは「口」か「鼻のいずれかです。自分自身の話す時の姿を想像してみてください。更に、人前で話す時に、次のような現象は起きませんか?
1.話している最中に「え〜」「あの〜」「まぁ〜」などの言葉が頻繁に出てしまう。
2.短い時間なのに、話していると口がすぐに乾いてしまう。
3.話している時の息継ぎで、「ス〜ッ」という息を吸う音が聞こえる。
このような現象が起きる方は「口」で息を吸っている確立が極めて高いと言えます。
そして、この息継ぎの仕方は、「腹式呼吸ができていない人」と言えるのです。逆に言えば、腹式呼吸ができていれば、先の三つのような現象は現れないはずなのです。
腹式呼吸とは、簡単に言うと、口を閉じて鼻から息を吸う方法です。口を閉じることで、殆ど「え〜、あの〜、まぁ」という無駄な言葉は出ません。もっとも、この無駄な言葉がまったくなければよいかと言うと、私は、一分間に四、五回くらいな、かえって入った方が、話に柔らかな味や温かさが出てよいと考えます。まるで、粘土に水を数滴たらすかのように、柔らかくなるのです。
もしも、ニュースキャスターのように、まったく無駄な音声がなかったならば、対面して話す場合においては、聞き手に「堅苦しさ」を与えてしまいます。
コツは「口をしっかりと閉じること」です。しっかりと口を閉じれば、鼻から息を吸わざるを得ません。そして、体に空気を十分に取り入れておけば、「はっきりとした声」も発声できるのです。具体的なコツとしては、「です。ます。ございます」という「語尾」をはっきりと言って、こときにしっかりと口を閉じると良いでしょう。