第1162冊目  心を上手に透視する方法 [単行本(ソフトカバー)]トルステン・ハーフェナー (著), 福原美穂子 (翻訳)


心を上手に透視する方法

心を上手に透視する方法


「らせん階段」を説明するとき、人は無意識に手を動かす


誰かに「らせん階段」とは何かを説明してもらったら、その人は百パーセント、人差し指をらせん状に動かしながら説明するだろう。


通常は、使わないでコミュニケーションをとるのはとても難しい。私たちは文字通り、手を使って身の回りのことを把握するからだ。


ザミー・モルチョは、脳資質において、親指と人差し指を動かす範囲だけで、足や頭をつかさどる容量の十倍を占めていることをわかりやすく説明している。僕にはとても納得のいく話だ。


たとえば昨日、僕は車で講演会に向かったが、よくあるように渋滞にはまった。バックミラーには一人の男性が携帯電話で話しているのが映っていた。


彼はどうやら、興奮して早口で話しているようだった。きっと声も大きかっただろう。そのとき彼はひっきりなしに自分のことを指差し、手を階段の形に動かしては、自分で描いた見えない階段を消す動作をしていた。


一言も聞こえなかったが、彼の手の動きを観察しただけでも、この男性が(彼はたびたび自分のことを指し示した)段階的に何かを行っていたことがわかった(彼は空想でさまざまな階段をつくっていた)。最後には、上の人間から、取るに足らない話だと切り捨てられたが、あるいは彼自身が諦めたようだった。つまり、相手の手の動きを注意深く見ているだけで、なんとなく話の内容はわかるものなのである。


これからはあなたが公有渋滞にはまったら、ほかの車に乗っている人を観察するという、有意義で楽しい時間つぶしができるにちがいない。どっちみち時間があるのだから、あなたの才能と知識を少しでも磨くことに使おう。


コミュニケーションをとるとき、顔の表情をコントロールすることにどれだけの可能性が秘められているのかに気づくと、多くの人が自分の表情をコントロールし始める。表情は相手に伝えたい内容を理想的に補うものだ。ただしそのときはたいてい、自分が行っている動作に気をつけることも忘れてしまう。


手や足は、誰よりもずっと多くのことを私たちに伝えているのかもしれないというのに。一緒にいる相手が意図せず、ついうっかり、心の内容を明かすような身振りをしてしまうことはよくある。それを観察するのは意味のあることだ。


たとえばミーティングで誰かが、「こういう行動は控えたほうがいい」と言ったとしたら、特に誰のことを指して言っているのかを手や足で示していることがよくある。また会話の中で、自分がもっとたくさん話したいと思っていたり、あるいは何かに責任を感じていたりするのを、無意識に自分を指し示しながら表明していることもあるのだ。