第1161冊目 入社1年目の教科書 [単行本(ソフトカバー)]岩瀬 大輔 (著)
- 作者: 岩瀬大輔
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2011/05/20
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 8人 クリック: 692回
- この商品を含むブログ (64件) を見る
本を速読するな
「読書は、著者との対話である」
ライフネット生命社長の出口がよく口にする言葉です。
対話しているときに、自分の話を聞き流されたり無視されたりするのは、誰だって嫌なはずです。ゆったりと向き合って、じっくり何度も何度も読むべきだというのです。
僕も出口の考え方に同意します。濫読が嫌いで、読むと決めたらじっぐり何度も読む習慣が身についています。
現代は多くの人が速読を推奨していますが、僕はその立場に与することはできません。本を読むこと自体が目的ではないので、5冊速読するくらいなら1冊の本をじっくり読むべきだと思っています。
じっくり読む価値のない本は、読まなければいいのです。これも出口に言われたことです。
「古典を読んで理解できなかったら、自分がばかだと思いなさい。新しく書かれた本を読んで理解できなかったら、作者がばかだと思いなさい」
古典は、時代の試練を耐え抜いて継承されてきたものです。含蓄を汲み取り、深く理解すべきものだと思います。しかしながら、新しい本を手にして理解できなければ、それは本を書いた著者の責任だと考えて構いません。
お金に余裕があれば、ある分野に関する本を20冊くらい「大人買い」してみるといいでしょう。本の冒頭を読んでつまらなければ、読まなくていい。どんどん捨ててしまってください。できれば、そのお金は惜しまないでください。
どうしてもお金をかけたくなければ、立ち読みや図書館を利用してください。そして、じっくり読める本に出会うまで、そのサイクルを早く回していくのです。
フィットネスクラブに入会しようと考えたとき、立地、営業時間、雰囲気、風呂、インストラクター、機材など、様々な要素を吟味して選ぶものです。一度入会しても、気に入らなければほかのクラブに替わるのが普通でしょう。
本もまったく一緒です。自分にじっくり来るもの、しっくり来ないものがあると思います。しっくり来るものが見つかるまで探してください。見つからなければ、いくらでも替えればいいと思います。
たとえじくり読める本に出会ったとしても、読みっぱなしでは意味がありません。たった3行でも構いませんから、必ず感想文を書いてください。
これは仕事の復習と同じ考え方です。その本から何を学んだのか。自分の仕事にとってどういう意味があるのか。思い浮かんだ考えをアウトプットして、自分のストックにしてください。
ただし、誤解してはいけません。3時間の読書で得られるものは、3時間なりの価値しかないのです。3時間で読んだ本に膨大な英知が詰まっていて、それを読んだことで一気にパワーアップできると考えないでください。1回の読書に、多くの期待してはいけません。
ハーバード・ビジネス・スクールに留学した当初、僕はとくかく懸命にメモを取っていました。すべてを学ぼうとした当初の僕は、80分の講義で20個の学びを得たと有頂天になっていました。
日が経つにつれて、学びは300個、400個と積み上がっていきます。僕の能力では覚えようがないほど、膨大になってしまいました。
それに気づいてからは、80分の講義で最も重要な学びを一つだけ書くように変えました。それでも、1年もすると200個、300個と蓄積されていくので、大きな学びになったのです。
読書をするときも考え方は同じです。本に書かれていることをすべて学ぼうとしなくて構いません。
結局のところ、仕事はオン・ザ・ジョブ・でしか学べないかもしれません。ペン習字の本を3時間読んでも字はきれいになりませんし、本を読んだだけでクリティカル・シンキングができるようになるわけではありません。
だからといって、本を読むことが意味のないことだと言っているのではありません。本を読むときは、1冊を慌てずじっくりと読み、その中から大きな学びを一つ得られればいいという程度の軽い気持ちで十分ではないでしょうか。