第1129冊目  FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学 [単行本]ジョー・ナヴァロ (著), トニ・シアラ・ポインター (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学

FBI捜査官が教える「第一印象」の心理学


徹底した快適さのメッセージ発信


食品スーパー業界は競争が激しい。利益幅が五パーセントにも満たないことなど、ほとんどの人は知らないだろう。もし食品販売のビジネスを営んでいるなら、できるだけ簡単に楽しく買い物できるようにし、常連客が何度でも店に足を運んで、食料品購入のすべてをその店に委ねるようになっていくことが不可欠だ。フロリダ州に、パブリックスというスーパーマーケット・チェーンがある。価格が高めな高級食品スーパーなのだが、我が家の近くにある店の駐車場は、いつも満車状態になっている。パブリックスが、常連客の快適さに徹底して気を配っているからだ。このスーパーマーケットが発信しているノンバーバルの「快適さのメッセージ」をいくつかあげてみよう。


駐車場にショッピングカートが放置されていないので、車が傷つく心配がなく、駐車場が障害コースにもなっていない。カートは係員が迅速に運んで、買い物客が利用できる場所に配置する。快適さのメッセージ――私たちはお客様にとって大切なものを大切にします。


カートの横に手の殺菌剤が置いてある。快適さのメッセージ――健康=安全、安全=快適。


パブリックスの店員に商品の場所を尋ねると、口で説明するのではなく、商品のある場所まで案内してくれる。レジ係から倉庫担当者、店のマネージャーまで、どんな職種の人でも、やっている仕事の手を止めなければならなくても、同じだ。快適さのメッセージ――お客様の必要としていることが、私にとって最も大切な責務です。


雨の日には係員が傘をさして買い物客を車まで送り、チップは絶対に受け取らない。快適さのメッセージ――お客様の快適さが私たちの仕事です。


店員はタトゥーを隠し、男性の場合はイヤリングと長髪が禁止され、体によく合った制服を着ている。快適さのメッセージ――お客様の家族の食品を、安心してお求めいただけます。


駐車場に入っていくのが不安だと感じる人には、マネージャー自ら付き添って車まで案内するか、誰か付き添える係員を手配する。快適さのメッセージ――私たちはお客様の安全に心を配っています。


購入した商品が気に入らなければ、理由を聞かれずに商品を返品することができる。快適さのメッセージ――お客様が要望および必要としていることが、私たちの最優先事項です。


レジ係が笑顔で挨拶する。快適さのメッセージ――お客様がここにいることを、私たちはとても嬉しく思います。


自分の買い物の経験と比べてみて、違いはどうだろうか? 私は、出入りを繰り返しながらもフロリダ州に住んで四〇年以上になり、ほかの食品スーパーマーケットができては消えていくのを見てきた。だがパブリックスは盤石で、家計費が非常に苦しい時期にもかかわらず、さらに成長している。それはこの店が、常に、顧客第一主義を貫いているからだ。