第1101冊目  ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫 [文庫]G.キングスレイ ウォード (著), G.Kingsley Ward (著), 城山 三郎 (翻訳)

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫


優れた指導者の条件


優れた指導者は、人びとの意思の疎通をはかることから始まる。人びとと親密な関係を保ち、あるいは結び、人びとが君の努力に呼応するようにしなければならない。君の考えに自分自身の優れた考えを加えて、それらを実行する方法も考え出してくれる、頼り甲斐のある、革新的な人びとを選びだす必要がある。これが第一段階である。


このような役員たちを選び出したら、君たちが対処しなければならないすべての問題について、その感触を掴むことが肝心である。そのためには、問題をひとつ残らず書きだして、それぞれの背景を多少付記し、一日か二日、関係者全員を集めて、ひとつずつ、徹底的に検討するしかない。このような会議のあとでは、もやのかかった頭のなかで、さまざまな考えや戦略がざわめいているだろうが、二、三日おいてから優先順位を決めて、報告書をまとめるように。これが第二段階である。


優先順位は大胆に決めるように。指導者は思いきって同僚の先頭に立たなければならない。それが指導者というものである。今後の計画を立てるときには、個々の分野の担当者として、君のチームのなかで誰が適任であるかを考慮するように。計画によってはおそらく特別委員会の設置が必要になるだろう。このよきに注意を怠ると、みじめな失敗に終わりかねない。委員会組織の最も重要な要素は、当然ながら、仕事をする委員長である。委員長の肩書きは欲しがるが、委員会の使命を果たすうえで、何の役にも立たない人が少なくない。このような人は、できれば最初に任命するときに、疫病なみに避けるように。間違いを犯したら(どんなに優れた指導者にも間違いはある)、如才なく追い払うこと。自分の仕事が忙しくて、同業団体の任務をおろそかにしている人には、はっきりとそう告げるといい。そのほうが相手に対しても親切だろう。それを口実に、面目を失うことなく退くことができるからである。委員を選ぶときには経験を重要視するように。もし君が幸運にも経験の豊かな、行動力のある人を四、五人主要な地位につけることができれば、君が任務を果たせないということはあり得ないだろう。必要とあれば、彼らが嵐のなかでも君を引っ張ってくれるからである。しかし私は親の面目で、君はきっとすばらしい指導者として、思慮深い発言をする人として(どうか、しゃべりすぎないように)、そして、しなければならないことはきっとする、誰にも負けない行動力の人として、新たな模範を示すと信じている。