第1039冊目  アメリカの企業家が学ぶ世界最強のプレゼン術 [単行本(ソフトカバー)]ジェリー・ワイズマン (著), 持田 直武 (翻訳), 福山 紫乃 (翻訳)

アメリカの企業家が学ぶ世界最強のプレゼン術

アメリカの企業家が学ぶ世界最強のプレゼン術


声に出す。正しい方法で練習する


言いたいことの整理がつけば、心もすっきりする。自分が何を最も言いたいかについて焦点を当てることは、その最初の一歩だ。言語化として知られている方法を実践することで、もっと心が落ち着くだろう。この言語化という方法は、本番と同じように声に出して練習するという簡単なものだ。聴衆を前にした時とまったく同じように、大きな声を出して練習するのだ。

声に出して練習することによって、考えが結実する。我々の日常的なコミュニケーションでも、個人的な付き合いであれ、仕事上の関係であれ、実際に会って話せば結果が出る。ビジネスピープルや官僚は、ああでもないこうでもないと議論して、お互いにプラスになるウィン――ウィンの合意をまとめる。プロの作家は自分の作品んを声に出して読み、ストーリーの流れを簡潔にする。明らかに、声に出すことが生み出す効果だ。

しかし、プレゼンターやスピーカーは声に出して練習するのをなぜか渋る。退屈だとかつまらないとか、時間の無駄だと思いこみ、最も効果的なテクニックの一つを、最も活用されないテクニックの一つにしてしまう。プレゼンテーションの内容をコントロールする絶好の機会を失ってしまうのだ。スポーツ選手はトレーニングを反復して行い、筋肉を鍛え、運動能力を高めることに熱中する。声に出して練習することは、知的筋肉を鍛え、話す能力を高めるための、メンタルなトレーニングだ。


私も、自分のプレゼンテーションの練習をする。私は二〇年以上ほとんど毎日、時分で作った内容をプレゼンテーションしてきた。繰り返しプレゼンテーションしている内容は練習しないが、新しい内容や特別なテーマの時は声に出して練習する。時には何十回も練習することがある。

ある投資銀行の会議で基調講演をした時のことだ。声に出して練習したおかげで、スピーチ自体はつつがなく終わった。すぐあとで、そのスピーチの短縮版をプロモーションビデオ用に撮影することになっていた。スピーチから一〇ヶ所ほどを抜粋して新たに撮影するのだ。抜粋した部分の内容は知り抜いているので、私は声に出す練習をせずに撮影に入った。ところが、抜粋部分がそれぞれ繋がりがない内容だったこともあって、私は何回も行き詰まってしまった。私は自分の教えが正しかったことを学び、それ以来どんな場合であれ、新しい内容は声に出して練習してからプレゼンテーションを行う。


声に出して練習するのは私だけではない。世界最大規模の技術メディア、リサーチ、イベント会社インターナショナル・データ・グループ(IDG)の創立者で会長のパトリック・マクガバンも同じことをしている。IDGは、初心者向けシリーズ本を出版し好調だった。ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、マクガバン氏は自分にそっくりの等身大の人形をオフィスに置いているという。そして「大きな声で自分のアイデアを人形に語りかけ、考えをまとめる」というのだ。