第1021冊目  上達の法則―効率のよい努力を科学する (PHP新書) [新書]岡本 浩一 (著)

上達の法則―効率のよい努力を科学する (PHP新書)

上達の法則―効率のよい努力を科学する (PHP新書)


ラソン的な鍛錬をする


ラソン的な鍛錬をすることを考えてみるべき時期である。

英会話なら、1週間ほど、英語ばかりで日本語を使わない環境に自分自身をおいてみる。

将棋なら、1泊2日などの競技会に出てみる。

このような機会は、自分で作ってもよいが、催し物への参加のような形で得られることもある。

そういう機会を選らんでチャレンジしてみるのである。

この種のマラソン的鍛錬は、時期が早すぎないほうがよいと考えている。早すぎるかなと迷ったら、見合わせるほうがよいと思う。理由はつぎのとおりである。

時期が早すぎると、技能が未完成である。その時期に、マラソン的な鍛錬をすると、悪い癖が固定してしまうことがある。

たとえば英会話などはあまり初めから長い時間をやらないほうがよい。会話では、前置詞など間違っていても、実質上あまり問題とならない。アメリカ人相手に会話をしていても、むこうも会話の内容を楽しんでいると、文法的な間違いなどについて誰もなかなか直してくれない。そうすると、間違った前置詞や間違った文法で話していても、一応通じるので、自分でも油断してしまい、間違ったまま身についてしまうということが起こる。その段階で、長時間かけて間違った記憶がついてしまうとそれを直すのは大変である。

同様のことがいろいろなものについて該当する。

いい加減な指使いでピアノを長時間引き続けると、指の形が崩れてしまう。

スポーツにしてもそうである。フォームが十分安定していない状態で長時間やると、悪いフォームが身についてしまう。

したがって、このマラソン的練習というのは諸刃の刃である。けれども、よい時期にこれをすると、技術が安定し、つぎの進歩への備えができる。