第1011冊目  負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書) [新書]丹羽 宇一郎 (著)

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

負けてたまるか! 若者のための仕事論 (朝日新書)

「論理的な話し方」は、読書でしか身につかない


私がこれほど読書を勧めるのは、「人は読書で磨かれる」と思っているからです。読書の効用の一つは、論理的思考が養われることです。

先に触れたように、私はまず目次をじっくり読むことにしています。著者が何を言おうとしているのか。どういう構成で話を展開させようとしているのか。目次を見ればだいたいのことはわかります。すると大枠が頭の中に入っていますから、読むスピードも速くなります。

もっとも目次の構成で「なるほど」と思うこともあれば、中には何だかよくわかならいものもなる。こうしたものは論外としても、しかし「なるほど、この著者はこういうことを言おうとしているのだな」ということがわかった上で読み進めていけば、自然とその論理展開が自分の血肉となり、物事を絶えずそういうふうに見ていくことができるようになるというわけです。

もちろん一冊や二冊、読んだくらいでそうはなりません。何冊も読み、それを何年も続けた結果のことです。「身につく」とはそういうことです。

また、「一体それが何の役に立つのか」と思う人もいるかもしれません。けれど忘れないでほしいのは、読書は食事と一緒だということです。一食分のご飯を食べたところで、それが筋肉になったり脂肪になったりと実感する人はいないでしょう。しかし、しっかり食べ続けているから、気がつくと背が伸び、筋肉がつき、髪の毛や爪が伸びてくる。

読書を続けて論理的思考を養うのも同じで、何の役に立つのかと聞かれれば、人生のあらゆる場面に役立つとしか言いようがありません。

とりわけ仕事には論理的な思考力が求められます。たとえば何かのプロジェクトを任され、それを遂行していくには、取引先や上司を説得しなければならない場合だって出てくるはずです。

そんなとき、ただ「やりたいんです」というだけでは、誰も相手にしてくれません。モゴモゴと何を言いたいのか不明瞭な単語を並べているだけでも相手にされません。なぜやりたいのか。やることでどんなメリットがあるのか。あるいはやらないでいたらどうなるのか。こうしたことを論理的に組み立て、説明する必要があります。論理的思考が育っていないと、物事を論理的に捉えられず、周囲の人にそれを説明することもできません。

私は、「経営は論理と気合い」だと思っています。多くの社員を引っ張っていくには、「ついてこい」と叫ぶだけではダメです。もちろんそうした気合い、気迫も大事なことですが、それに加えて、きちんと論理的に説明して納得させなければ、人は動きません。

この本の読者の誰もが会社のトップになるわけではないでしょうが、少なくとも自分の考えを論理的に組み立てて話せるようになることは、仕事を進める上で必須の能力です。同世代の友人同士なら、流行りの言葉や感覚で言いたいことがわかるかもしれませんが、仕事では、社内外の年齢も経験もさまざまな人たちと話をして、理解をし合わせないといけません。そのためのツールが「論理」です。慌てて話して話し方のハウツー本を読んだって、論理的な話し方はすぐにはみにつきません。

話をすると、相手が本を読んでいるのかどうか、私はたいだいわかります。言葉の選び方しかり、話し方しかり。多少乱暴な言葉遣いであっても、自分の思いを的確に表す言葉を選び、それを順序立てて説明できる能力があれば、言いたいことはしっかり伝わってきます。繰り返しますが、これは読書でしか培われません。