第942冊目  「分かりやすい説明」の技術 最強のプレゼンテーション15のルール (ブルーバックス) [新書]藤沢 晃治 (著)

せっかちな説明

私の勤務先では、一般社員が物品を購入したり、自分で立て替えた公有費を会社に請求する場合、簡単な伝票に書き込んで、経理担当者に渡すだけで精算せてもらえます。

しかしある時、その経理担当者が入院してしまいました。その間、一般社員はパソコンで経理システムの画面を開き、自分でデータを入力しなければなりませんでした。大したことではないのですが、やはり何事も慣れないことは大変なものです。

私も、専門書を購入した際の立て替え分を請求するときに苦労しました。周囲に助言を求めながら入力を完了し、最後に画面上の「請求」のボタンをクリックしました。画面には「請求完了」と表示されたので一安心しました。

ところが二日後、パソコンを開いてみると、その請求が何らかのエラーで差し戻されていたのです。その理由をいくら読んでも理解できなかった私は、経理システムの管理者に電話で質問しました。

しかし、その電話での説明がなかなか理解しづらかったのです。親切な人なのですが「あなたの質問したいことは、これでしょ?」とばかりに、私が話し終えるのを待たずに、矢継ぎ早に話すのです。セッカチな性格なのか、それとも多忙で時間を惜しんでいるのか、とにかく急いで説明を切り上げようとするのです。

そのため私お理解はかえって進まず、余計に時間がかかるという皮肉なやり取りが続きました。そうこうするうちに、そのシステム担当者が、私の理解の悪さにいらだっていることが声の調子から分かりました。

その時、彼のそばにいたらしい同僚が、彼のいらだちを見かねたのか、途中で電話を代わってくれました。そして低い、落ち着いた声でゆっくり説明を繰り返してくれました。

一〇分近く話していても要領を得なかった説明が、その人に代わったら、すぐに分かりました。

同じことを説明しているのに、どうしてこうも分かりやすいんだろう、何が違うのだろうかと考えさせられました。