第941冊目  すごい説得力: 論理的に考え、わかりやすく伝える話し方 (知的生きかた文庫) [文庫]太田 龍樹 (著)

「声に感情を込める」トレーニン

声量を意識するポイントを学んだら、次に大事なのは、目と同じように、声にも感情を込めるトレーニングをすることです。

「わかりました」という言葉ひとつをとっても、相手が本気でいっているのか、実は関心がないのか、言葉の裏にある感情がわかります。

そこが声の怖いところで、話しているだけでその人の感情、つまり喜怒哀楽や自信、不安などが表れてしまうのです。

逆にいえば、自分の感情をそのまま声に表すことができれば、説得力も自然に増すことになります。

声に感情を込めるられるようになるには、次のようなトレーニングが効果的です。

まず、次に2つの名文を音読してみてください。

「メロスは、単純な男であった。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、メロスの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。メロスは、王の前に引き出された」(『走れメロス太宰治


「山路を上りながら、こう考えた。智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。住みにくさが高じると、安い所へ引き越したくなる。どこへ越しても住みにくいと悟った時、詩が生まれて、画が出来る。人の世をつくったものは神でもなければ鬼でもない。やはり向う三軒両隣りにちらちらするただの人である。ただの人が作った人の世が住みにくいからとて、越す区にはあるまい。あれば人でなしの国へ行くばかりだ。人でなしの国は人の世よりもなお住みにくかろう」(『草枕夏目漱石


そうしたら、それぞれの文章を、ごく自然な会話をしているように声に出してみてください。「〜だ・である調」のこの名文を、「〜です・ます調」に変えても構いません。

次に、同じように声を出しながら、ジェスチャーを交えて話してみましょう。コツは、話していることを、そのまま表現することです。

まずはとにかく、手を動かしてみてください。ジェスチャーゲームをしているような感覚でやるといいでしょう。

ここからは、感情を込める訓練になります。声とジェスチャーで表現しながら、感情が相手に伝わるようにイメージして話してみましょう。

次の4つのパターンでやってみてください。

喜怒哀楽の喜と楽。できるだけ楽しそうに、嬉しくて、嬉しくてたまらないといった感じで笑いながら、話す。

喜怒哀楽の怒。怒りながら、怒鳴るような感じで話す。

喜怒哀楽の哀。悲しみを込めて、泣くように話す。

最後は、驚き。びっくり仰天した気持ちで話す。

このトレーニングを、ジェスチャーを交えながら、それぞれの感情にすぐスイッチできるようになるまで、何度も繰り返してみましょう。

一語一句、正確に話す必要はありません。間違えてもいいので、思い切って話すようにしてください。

これを習得すれば、話に自分の感情を込めることができるようになり、あなたの説得力により一層磨きがかかります。