第871冊目  人を10分ひきつける話す力 (だいわ文庫) [文庫]

齋藤孝 (著)

人を10分ひきつける話す力 (だいわ文庫)

人を10分ひきつける話す力 (だいわ文庫)

「読む、書く」は話す力の訓練になる

話すときには、内容に意味がある、ライブ感があるという二つの押さえる必要がある。もちろん、日本語として間違っていないという前提がある。

話す内容の意味の含有率を高めるいちばんいい法統は、「書き言葉」を訓練することだ。つまり、読書すること、文章を数多く書くことだ。

書き言葉を訓練したことをのある人の話し方と、ない人の話し方は、はっきりと違いがでる。

まず語彙が違う。書き言葉の語彙と話し言葉の語彙には大きな差がある。話し言葉の語彙は言葉全体の中の氷山の一角にすぎない。書き言葉の語彙は、『広辞苑』などの辞書を見ればわかるとおり、ふだん使わない言葉が膨大にある。

ところが、日常生活で必要な言葉は、せいぜい五〇〇から一〇〇〇ワード程度だ。ふだんの生活では、ほとんどそれで済ませている。話し言葉だけで話を構成してしまうと語彙が少なくなる。語彙の少なさに比例して、意味の含有率も低くなる。

物事を表現するにあたって、語彙が豊富かどうかは決定的な要素だ。語彙を増やすためには書き言葉に触れる必要がある。語彙を増やすために必要なのだ。

ふだんの読書量が多ければ、自然に語彙も豊富になる。読書量が豊富かどうかが、話すときの語彙の数に影響を与える。

ふつうに話しているときは、別に読書という活動そのものが影響を与えているとは思わないだろう。しかし、それは決定的で、「よくこんなに間延びした話で恥ずかしくないな」と思うような人は、だいたい読書量が足りない。

語彙が豊富かどうかは、頭の良い悪い以前の問題だ。語彙に意識が向かないのは、自分の話の意味の含有率に対する感覚自体がまったくないといっていい。

さらに自分の書く訓練をしてみるといい。書く作業をすると、自然に考えを深めることができる。

今は手軽に日記風のブログなどで、文章を書き、多くの人に読んでもらうことができる。自分が読んだ本などに関して、自分の経験を交えて、一まとまりの話に仕上げてみる。そこにおもしろいタイトルをつけてみる。そういう経験をしてみるといい。

広辞林

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