第931冊目 スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫 [文庫]

サミュエル スマイルズ (著), 竹内 均 (翻訳)

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫

スマイルズの世界的名著 自助論 知的生きかた文庫


衣の下に隠された豊かな心を見ぬく

真の礼節を知る人間は、他人の意見にもよく耳を傾ける。昔からいわれるように、不作法が高じると独善に陥りやすい。独善の最悪の表れが教情と傲慢である。

人によって考え方が違うという事実を、われわれはまず認めなくてはならない。実際に意見が衝突したら、がまんにがまんを重ねてねばり強く話し合うべきだ。

信念や意見は穏やかに主張し合えばいいのであって、何も口角泡をとばして激論やなぐり合いに及ぶ必要はない。暴力沙汰にはならなくても、無礼な言葉が相手の胸に突きささり、いやしがたい傷を残す場合もある。このような事態はくれぐれも回避したほうが身のためだ。

立派な礼節は、地位や身分にかかわたず誠実で思いやり深い心から生まれる。力仕事に従事しているからといって、必ずしもそのふるまいが荒っぽく粗野なものになるわけではないし、上品な職業についていてもからっきし不作法な連中もいる。

不断に修養を積み、より多くの人間と接するように努めれば、われわれは自分本来の人間性を少しも損なうことなく礼節や洗練された態度を身につけられるだろう。貧富の差や、また生活条件の違いにもかかわらず、人は誰でも広く豊かな心を持てるはずだ。