第3246冊目 家族のためのユマニチュード: “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア  イヴ・ジネスト (著), ロゼット・マレスコッティ (著), 本田 美和子 (著)


家族のためのユマニチュード: “その人らしさ

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ"を取り戻す、優しい認知症ケア

  • 自分が知らないことについては不安に感じ、知っていることについては安心する


人だ誰もが自分が知っていることには自信があり、知らないことは不安に感じます。認知症をお持ちの方も同じです。そして、不安に思う気持ちが認知症の行動・心理症状を引き起こします。


私たちにとって、なぜそんなことをするのか意味が理解できず当惑することが多い認知症の行動・心理症状ですが、行動が混乱しているように見えるときには、混乱するほどに不安感が強いのだと考えて、不安を取り除く工夫をしてみてください。不安を取り除くための提案をいくつかご紹介します。


一度にたくさん頼まない


ご本人が自信を持ってできること、たとえば簡単な調理を一緒にすることで落ち着いてもらうことができます。一度にたくさんのことを頼まないことが重要です。たとえば、「お母さん、肉じゃがをつくろう」という誘いは、「肉じゃが」という言葉を理解し、そのために必要な材料を思い浮かべ、調理器具を準備して、材料のジャガイモの皮を包丁でむく、肉を切る、肉を油で炒めてジャガイモを加え、それから調味料を入れて煮込むという複雑な工程を行うことを意味します。これではご本人はますます混乱してしまいます。


安心して取り組める環境をつくる


混乱を避けるためには、まず「一つずつ頼む」ことが大切です。「お母さん、お芋の皮のこの包丁でむいてくれる?」とジャガイモと包丁を渡します。むき終わったら「お母さん、このくらいの大きさに切ってくれる?」と一つ例を示します。切り終わったら、「ありがとう。ではもう一つお願いします」と二つ目のジャガイモを渡す、といった具合です。ご本人が安心して取り組める環境を先導しながらつくっていくことが認知症の行動・心理症状を防ぐ鍵となります。