第3244冊目 家族のためのユマニチュード: “その人らしさ”を取り戻す、優しい認知症ケア  イヴ・ジネスト (著), ロゼット・マレスコッティ (著), 本田 美和子 (著)


家族のためのユマニチュード: “その人らしさ

家族のためのユマニチュード: “その人らしさ"を取り戻す、優しい認知症ケア

  • 愛情を表現することをためらわない


「日本人には、こんなことはできません」という意見を、ユマニチュードを日本に紹介して以来たくさんお受けしました。とても近い位置に立ち、相手に触れながら目と目を合わせることは恥ずかしく思えます。「フランス人ならできるでしょうけれど、日本人には無理です」と思われても不思議ではありません。


でも、家族や友人と日常的に頬にキスを交わし、挨拶をして抱擁する文化のあるフランスでも、ケアの現場のおいては、近づいて目と目を合わせることも、ケアの場で言葉をあふれさせることもできていないことが多いのです。


文化は国によって異なります。そして、それは後天的に、社会規範としてその国に暮らす人々が身につけていきます。しかし、認知症が進行していくと、後天的に身につけた社会規範は失われていきます。そして最後に残るのは、人が生まれ育った人間としての特性です。「ユマニチュード」はその人間の特性に着目して開発されたケアの技法です。


私たちは、フランスをはじめとする欧州各国、米国、カナダ、タイ、中国、それから日本でユマニチュードを使ったケアを行ってきました。そして、ケアの現場で起きていること、ユマニチュードのケアへの反応に国による違いはないことを体験してきました。


ユマニチュードでは、「人とは何だろうか」といつも考えます。そして、「あなたは大切な人間なのですよ」と相手が理解できる形で伝え続けます。伝えためのその技術が、「見る」「話す」「触れる」「立つ」のユマニチュードの4つの柱を常に組み合わせて行う「マルチモーダル・コミュニケーション」と、すべてのケアを一連の物語として行う「ケアの5つのステップ」です。


もちろん、最初は気恥ずしいはずです。しかし、これは相手とよい関係を結ぶための技術なのです。「あなたのことを大切に思っています」と相手が理解できる形で伝えるためにはそれが不可欠だと私たちは考えています。まずは勇気を出してやってみてください。