第2597冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 足の向きを変えるとき、特に人やものに向けるか、人やものから離すかに注目


私たちは好きなものや感じのいいもののほうを向く傾向がある。周囲の人たちも同じことだ。実際この情報を用いて、相手が自分に会って嬉しいのか、または早く立ち去ってほしいと思っているのかを判断できる。熱心に話しこんでいる二人の人たちに近づいていくとしよう。その二人には以前に会ったことがあり、いっしょに話がしたいので、そばに行って「こんにちは」と声をかける。問題は、その二人が自分を会話に加えたいと思っているのかどうかわからないことだ。気持ちを見にく方法はあるだろうか? ある。相手の足と胴体の行動を観察すればいい。もしも二人が挨拶に応じて体の正面をこちらに向けたと同時に、足もこちらに向けて動かせば、歓迎の様子は本物だ。しかし足をまったく動かさずに、上半身だけをこちらに向けて挨拶に応じたのなら、ほかの人には加わってほしくないと思っている。


私たちは嫌いなものや不愉快なものから体の向きをそらす傾向がある。法廷での行動の研究によれば、陪審員が証人を嫌いなときには、足先を一番近い出口に向ける(ディミトリアスとマツァレラ、二〇〇二年)。腰から上は、話している証人のほうに礼儀正しく向けていながら、足先は、廊下や陪審員控室に続くドアなどの自然な「逃げ道」のほうに向けているという。


法廷で見られる陪審員の行動は、一般的な人付き合いにも当てはまる。私たちは人と話すとき、腰から上では相手のほうを向くだろう。けれども不愉快な会話なら、足先が相手からそれて、一番近い出口のほうを向いている。人が足先をそむけるのは、たいてい撤退の合図、現在いる位置から離れたいというサインだ。誰かと話していて、相手がだんだん、または突然、足先をそむけたなら、何か手を打たなければならないことを示している。なぜそのような行動が生まれたのだろうか? 時には、その人が約束に遅れそうで、本当にすぐに出発しなければならないこともある。あるいは、その人がもういっしょにいたくないと思っているサインのこともある。何か気を悪くするようなことを言ってしまったのかもしれないし、不愉快なことをしてしまったのかもしれない。足先をそむける行動は、その人が立ち去りたがっていることを物語る。ただし、相手が「なぜ」その場を去りたいのかは、その行動を取り巻く状況に応じて、自分で判断しなければならない。