第2595冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • なだめ行動の大切さ


辺縁系の固まる、逃げる、戦うという反応がノンバーバル行動に与える影響は、方程式の一部にすぎにあ。ノンバーバル行動を学ぶうちに、辺縁系の反応があれば――特に、いやな経験や脅威を感じる経験に対する反応があれば――その後には必ず「なだめ」の行動が続くことに気付くだろう(ナヴァロ、二〇〇七年)。


このような行動は、文献では「適応子(adapters)」と呼ばれることが多いが、何か不快なことやまったく手に負えないことを経験した後で、気を静める役割を果たすものだ(ナップとホール、二〇〇二年)。脳は「通常の状態」に戻ろうとして、元気づける(なだめる)行動をとるよう体に命令する。そうした行動はシグナルとなって同時に外からも読み取れるため、私たちはそれを観察し、その場の状況に応じて解読できる。


なだめ行動は人間の特有のものではない。たとえば、ネコやイヌは自分の体をなめたり互いの体をなめ合ったりする。人間の場合のなだめ行動は多種多様で、はっきりわかるものあれば、微妙で捉えにくいものもある。なだめ行動の例を挙げろと言われると、たいていの人はすぐ小さい子どもの指しゃぶりを思い浮かべるだろう。ただし成長して指をしゃぶらなくなった後にも、社会的に受け入れられる目立たない方法で気持ちを静めていることには気付いていない(たとえばガムをクチャクチャやったり、鉛筆を噛んだりしている)。もっと微細ななだめ行動となると、ほとんどの人は見分けられないし、相手の考えや感情を明らかにする上で重要なことも知らない。それではもったない。ノンバーバル行動をうまく読み取るには、人間のなだめ行動を把握して読み解くことが不可欠になる。なぜだろうか? それは、なだめ行動が人のその瞬間の心の状態をとてもよく表し、しかも並外れた正確さをもっているからにほかならない。