第2514冊目 「権力」を握る人の法則  ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

「権力」を握る人の法則 (日経ビジネス人文庫)

  • 上司を気分よくさせる


自分の仕事ぶりについて考えるとき、ぜひとも確認すべき点が一つある。それは、自分の行動や発言、そして仕事の成果は、上司をいい気分にさせているか、ということだ。いい気分というのは、あなたに満足するという意味ではなく、上司自身が自分に満足しているか、という意味である。あなたがいまの地位を確保し、さらに上へ行く確実な方法は、端的に言って上司をご機嫌にしておくことなのだから。


自分に自信のない人に限らず、ちょっとばかりうぬぼれて気分よくなりたいのは人情である。客観的に見れば人間は失敗から学ぶことの方が多いのだが、誰しも自分はなかなかよくやっている、結構優秀だなと思っていない。これを自己高揚動機と呼ぶ。こうした動機があるため、たいていの人が肯定的な意見を聞こうとし、否定的な意見を煙たがる。しかも多くの人は自分の能力や成果を過大評価し、「自分は平均以上」だと考えている。知性、ユーモアのセンス、運転能力、容姿、交渉能力などについて自己認知の調査をしたところ、回答者の半分以上が「自分は平均以上」だと答えたという(そういうことはありえない)。また人間は自己愛が強いので、自分に似た人を好む傾向がある。さまざまな調査でも、人間どうしが惹かれ合う要因として類似性が重要であることが確かめられている。たとえば名字か名前のどちらかが自分と似ている人と結婚する確率は、そうでない場合よりも高い。また、被験者にランダムな番号を割り合えた実験では、自分の誕生日と似た番号の人に好感を抱くという結果が出ている。さらに、自分に似た人を好ましく思う傾向から、自分の属する集団(内集団)をひいきし、それ以外(外集団)を差別しがちである。このような傾向を内集団バイアスと呼ぶ。同様に、自分と同じ社会的カテゴリー(人種、出身地、経歴など)に属する人も優遇する傾向がある。