第2318冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 感謝


感謝の反対は何だろう。恨み、困窮、自暴自棄。どれもカリスマがあるとは言えない。就職の面接でもデートでも、自暴自棄という印象を与えるほど、チャンスを台無しにする要因はない。感謝は、そうした否定的な感情にとって効果的な解毒剤となる。なぜなら感謝の心は、自分がすでに持っているもについて考えるところから生まれるからだ。さらに、感謝はカリスマを伝える優れた手段にもなる。物質でも経験でも、大切な人間関係でも、すでに持っているものに感謝することを通じて、目の前に集中してプレゼンスが高まり、自信と誠意が生まれやすくなる。


最近は、誰もが感謝の心を説いているようだ。オプラ・ウィンフリーは「感謝日記」をつけようとすすめる。複数の研究から、感謝の心を持つと、より健康で幸せに長生きできる傾向があることもわかっている。感謝がさまざまなかたちでカリスマを高めることは、感謝の効果に関する科学的データと同じくらい説得力がある。感謝の心を持つと、表情が和らぎ、体全体がリラックスするなど、全身のボディランゲージが即座に変わるだろう。そして、ボディランゲージから誠意とゆるぎない自信が発散され、人々は心を動かされる。


ただし、感謝しようと思うだけで感謝できるものではない。実際、大半の人にとって、感謝することは難しい。人間は快楽に順応する生き物だ。快感や幸福感に慣れると、当たり前だと思いやすい。さらに、感謝しろと自分に言い聞かせても、罪悪感を招くだけで逆効果になることが多い。人から「感謝しろ」と言われると、感謝していない自分を腹立たしく思ったり、罪悪感を覚えたりするだけだと、私はクライアントからよく聞かされる。


感謝の心を引き出す方法のひとつは、目の前にある些細なことに注目することだ。たとえば、私は先日レストランでランチミーティングをしながら、小さな喜びを探した。窓から太陽の光が差し込んでいること、空が青いこと、ウエイターが私の注目を間違えなかったこと、手を伸ばせばケチャップがそこにあること。


三者の目で自分の人生を眺めることも、感謝の心を高めるツールとして効果がある。自分を主人公に、前向きなシナリオを書いてみよう。


たとえば、4章で否定的な感情をコントロールする方法を説明した際に紹介したグラフィックデザイナーのメアリーは、次のようなシナリオを書いた。


「メアリーはとても素晴らしい人生を送っている。安定した収入を得られる仕事もある。つらい肉体労働に耐え、あるいは仕事が見つからない人もたくさんいるのに、彼女はオフィスで礼儀正しく扱われ、たくさんの同僚から尊重されている。友人や家族にも愛され、評価されている。みんなが心から彼女を思いやっている。彼女自身もよき友人であり家族だ。誰かが自分を必要としていれば、じっと寄り添うときもある。きょうも彼女はまずまずの1日だった。報告書を完成させ、手伝ってくれた同僚に感謝を伝え、ジムで汗も流した」



重大な出来事を並べる必要はない。メアリーのように、自分の人生にとってささやかだけれど大切な、前向きなことこそ、感謝する対象にぴったりだ。


このテクニックは、本書で紹介する多くのテクニックと同じように、書くという行為が決定的な違いをもたらす。書くことによって、前向きな感覚を、より現実的にしっかりと経験できるのだ。あなたの人生を第三者が見ているかのように想像するだけでは、現実感がまったく生まれず、重みも薄れるだろう。しかし言葉にして書くと、最初は違和感を覚えたシナリオも、最後には奇妙なくらい現実らしく感じるだろう。