第2248目 「権力」を握る人の法則 ジェフリー・フェファー (著), 村井 章子 (翻訳)


「権力」を握る人の法則

「権力」を握る人の法則


アマンダのケースを紹介しよう。アマンダは大手消費財メーカーの有能なエグゼクティブで、会社から派遣されてMBAコースに在籍したいた。給与をもらって一年間のコースに送り込まれたこと自体、会社がかける期待の表れと言えよう。問題は、やや控えめなアマンダ自身がこのチャンスを生かせるか、ということだった。コース修了時にアマンダは報告を兼ねて上司にメールを送ろうと考え、下書きを作成する。そして送る前に、クラスで仲良くなった友達(やはり女性エグゼクティブである)に見せた。するとこの友人は全体を力強いトーンに書き換え、より上の地位で力を発揮したいことを伝えるとともに、具体的にどのような分野を希望するかをはっきり書き加えるべきだと主張する。手直しした文章はアマンダから見るといやに厚かましく、送るのは気が引けたが、迷った末にそのまま送った。すると驚いたことに、会社は好意的な反応を示したのである。経営陣は、アマンダの自信に満ちた論調あ仕事上の野心を好ましいと感じた。考えてみれば、当然である。経営幹部は日頃そのようにするまっており、アマンダは彼らと同じ姿勢を示したに過ぎないのだから。


自信を誇示するのは、とくに女性にとってはむずかしいようである。女性は慎み深く控えめにふるまうべきだという社会的期待があるからだろう。だがそのようなふるまいは、キャリア形成では不利になりやすい。社会心理学者ブレンダ・メジャーの調査では、女性は同じ給与水準の男性より長時間勤勉に働いていることが判明した。また要求する給与の額が男性より少なく、初任給や到達可能な最高額についても期待値が低い。この調査から、女性は自分を過小評価する節があり、それが給与の交渉でも不利に作用していることがうかがえる。社長の報酬ですら男性と女性で差があるのは、おそらくこのためだろう。


自分に自信がなくしっかりと自己主張ができないと、給与だけでなく何事も不利になりやすい。これは女性に限った話ではない。自信さなげな人は、自信ありげな人にどうしても押されてしまう。