第2222冊目 (文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 三枝理枝子 (著)


(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

(文庫)ビジネスで差がつくマナーの心得 (サンマーク文庫)

  • 一瞬の一〇〇%よりも、常に二〇%の笑顔がプロの証


ANAに入社して間もないころのことです。


新入社員訓練の一環として、他部署の方の話をうかがう機会がありました。オイルまみれのつなぎをきた整備士、靴底をすり減らして歩き続ける営業マンなど、とにかくいろいろな職種の方の話を聞きました。


その中には胸が熱くなる感動の話もあれば、反対に悔し涙の話、はたまた思わず笑ってしまうようなおもしろい話があり、あらゆる角度からチームがつくられていることを意識できる素晴らしい時間でした。


講演が終わり休憩時間になったときのことです。


前方で営業職の方と同期数人が楽しげに雑談をしていました。一番前の席に座っていた私は何気なくその話を聞いていたのですが、正直、興味のある話ではありませんでした。連日の訓練の疲れもあったのですが、ボーッと気の抜けた顔、つまらなそうな顔をしていたのだと思います。


すると、教官に名前を呼ばれました。ハッと立ち上がると、「休憩中も勤務時間です。人前で仏頂面をするものではありません」と、お叱りを受けました。思わず顔が赤くなり、とても恥ずかしかったのを覚えています。


たしかに、講演者の話は熱心に目を輝かせてメモを取りながら聞いていましたが、休憩に入ったとたん「休憩中だから関係ない。気を抜いていい」とい、憮然とした顔をしていたのだと思います。表情にまで意識を行き渡らせていませんでした。


「あなたたちは見られる仕事、どんなときも自分の顔に責任を持ちなさい」


静かで穏やかな物言いでしたが、胸にグサリと刺さりました。


そのときから私はたとえ関心がなくとも、疲れていても、人の前では目を輝かせてはつらつとして、ほんの少しでも絶えず笑顔を心がけるようにしています。そのおかげで「いつも表情が優しく、穏やかですね」と好感を持っていただき、ご縁をちょうだいすることが増えてきたように思います。