第2211冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫) ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)


ボディー・ランゲージを読み取ろうとするとき、相手の顔から観察を始め、上から下へと焦点を移動させていく人が多い。ところが、虚勢を張って本心を隠すために一番よく利用されるのが顔だ。だから私のアプローチはまったく逆になる。FBIで無数の事情聴取をこなしてきた私は、最初に容疑者の足と脚に注目し、そこから少しずつ観察の対象を上に移していって、最後に顔の表情を読み取ることを覚えた。正直さという点について言うなら、足から頭に移るにつれて誠実さは薄れていく。残念なことに、最近のものも含めてここ六〇年の警察の資料を見ると、事情聴取や人の心の解読では顔に注目することばかりが強調されている。さらに悪いのは、参考人がテーブルや机の下に足と脚を隠したままで質問に答えるのを許していることだ。


ちょっと考えてみれば、顔の表情に人をだます性質があるのは当然だろう。私たちが顔でウソをつくのは、小さいころからそう教えられて育ったからだ。子どもが目の前に置かれた料理に正直にいやな顔をすれば、「そんな顔をしないで」と、親に一喝される。「従兄弟たちが来ている間、少なくとも楽しそうな顔をしておいてね」と親から言われ、作り笑いを覚える。親は――そして社会は――社会の調和のために、要するに顔で本心を隠すようにと、人を欺き、ウソをつくようにと、子どもたちに教えているのだ。そんなわけだから、ウソがとても上手になる傾向があるのは当然だと言える。実際、誰でもみんな上達しているので、親戚の集まりで楽しそうな顔をしていれば、心の中では遠い親戚を早く帰す策を練りながら、いかにも大好きだという表情に見える。