第2075冊目 カリスマは誰でもなれる オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

  • 魔法ではなく、学んで身につける振る舞い


一般に思われているのと違って、人はカリスマをくわえて生まれてくるわけではない。カリスマが生来の資質だとしたら、カリスマのある人はつねに周囲を魅了するはずだが、実際はそうではない。誰よりも魅了のあるスーパースターでも、カリスマはある瞬間に現れ、次の瞬間には消えている。マリリン・モンローは電気のスイッチを押すようにカリスマを「オフ」にして、地下鉄の中でもあったく気づかれなかった。そして身振りをちょっと変えるだけで、カリスマを再び「オン」にした。


近年の研究から、カリスマは生まれつきの性格や魔法のような資質ではなく、特定の非言語的な振る舞いが引き出すものであることがわかっている。つまり、カリスマのある人でも、それを発揮する度合いは時によって異なる。カリスマにつながる振る舞いをするかどうかによって、カリスマの強さが変わるのだ。


自分がその場の主導権を握っているという絶対的な自信を感じたことはないだろうか。人々があなたに感銘を受け、あなたの姿を見て歓声をあげる。そんな経験をしたことがあっても、必ずしも自分にカリスマがあるとは考えないものだ。なぜなら私たちは、カリスマがあれば「いつでも」「どこでも」周囲を魅了すると思っているからだ。


カリスマが生まれつきの資質だと誤解される理由のひとつは、さまざまな社会的スキルと同じように、カリスマ的な振る舞いが人生の早いうちから身につくからだ。ただし、ほとんどの人は、カリスマ的な振る舞いを意識して学んでいるわけではない。新しい振る舞いを試し、その結果を見ながら洗練させていくのだ。そして結果的に、それらの振る舞いが本能的になる。


カリスマのある著名人も多くの人が、カリスマを身につけようと懸命に努力し、少しずつ前進してきた。ただし、私たちが彼らの存在を知るのは彼らのカリスマの全盛期なので、スーパースターがつねに周囲を感銘させてきたわけではないと言われても、なかなか信じられない。


スティーブ・ジョブズは2000年代で最もカリスマのある経営者の1人とされているが、最初からそうだったわけではない。実際、彼の初期のプレゼンテーションを見ると、恥ずかしそうでぎこちなく、過剰に演技をしているかと思えば、オタクらしさが全開だったりする。過去の映像などを見てわかるように、彼は長い年月をかけてカリスマ性を徐々に高め、公の場で見せる姿や振る舞いが少しずつ改善させていった。


カリスマについては社会学者や心理学者、認知学科者、行動科学者などが詳しい研究を続けてきた。臨床実験や、分野を縦横断する研究、質に注目した解釈的分析など、さまざまな手法が用いられている。研究対象も、大統領や軍の司令官、あらゆる年齢の学生、中間管理職やCEOなど多岐にわたる。これらの研究のおかげで、カリスマは特定の振る舞いであることがわかっている。