第2131冊目 FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)  ジョー ナヴァロ (著), マーヴィン カーリンズ (著), 西田 美緒子 (翻訳)


FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

FBI捜査官が教える「しぐさ」の心理学 (河出文庫)

  • 足のサイン


大企業の人事担当役員をしているジェリーは、銀行役員を対象にした私のセミナーに出席して以来、足の行動に注目し始めたそうだ。仕事に戻って数日後に早速この新しい知識を活用できたと、次のように話してくれた。「社員の中から海外派遣要員の選抜をまかされていたんです。ある有能な候補者に、海外で働きたいかどうかと尋ねたら、小刻みに弾ませる嬉しそうな足をしながら、『はい!』と答えました。ところが次に勤務地はインドのムンバイだと伝えると、彼女の足はピタリと動きを止めてしまいました。私はそのノンバーバル・シグナルの変化に気付いたので、なぜムンバイに行きたくないのかと訊きました。彼女はビックリ仰天してしましたよ。本当に驚いた声で、『わかりますか? 私は何も言わなかったのに。誰かから私のことを聞いたのですか?』と、尋ねてきました。そこで私は、彼女が勤務地を嬉しく思っていないのを『感じた』のだと伝えました。『その通りです。私は香港勤務の候補なのだと思っていました。香港なら何人か友だちもいるんです』と、彼女は自状しましたよ。インドに行きたくなかったのは明らかで、足が間違いなくその気持ちを物語っていました。


注目すべき点を二つだけ挙げておきたい。第一に、ノンバーバル行動はすべてに共通点として、嬉しそうな足も前後関係に沿って解釈し、本物の手がかりなのか単にイライラしているだけなのかを見極める必要がある。たとえば「貧乏ゆすり」のクセがある人の場合、嬉しそうな足といつもの神経質なクセとを見分けるのは難しいかもしれない。それでも、小刻みに揺らす動作が速くなったり強くなったりすれば、それも何か大切なことを聞くか見るかした直後に変化があれば、その人が現状に自信や満足度を高めたシグナルの可能性がある。


第二に、足や脚を動かすのは単にイライラした気分を表していることもある。私たちは、イライラしたときや、事態を何とかしなければならないと感じたとき、足を小刻みに動かすことが多い。学生がいっぱいいる教室では、教室じゅうで学生たちの足と脚がどれだけピクピク、ガタガタ、バタバタと動いているかに気付くだろう。授業が終わりに近付くにつれ、その動きはますます激しくなるのが普通だ。たいてい、学生がイライラしているから話を早く切り上げたほうがいい証拠で、嬉しそうな足のサインではない。終業時間になることには足の動きは最高潮に達する。たぶん、学生たちは私に何かを伝えたいのだろう。