第2044冊目 これだけ! ほめフレーズ  鈴木 達也 (著)


これだけ!  ほめフレーズ

これだけ! ほめフレーズ

  • 「非言語メッセージ」のコントロールに細心の注意を払う


29ページで、「人はコミュニケーションしないでいることはできない」とお伝えしました。あなたは黙っているときでも表情やため息などの非言語メッセージを発し、相手はその影響を受け取るからです。


「非言語メッセージ」とは、身振り、顔の表情、声のトーンなどの言葉以外のメッセージです。


言葉を使っている状況では、この「非言語メッセージ」と「言語メッセージ」が一致すると、伝達力が強まります。


オバマ大統領が演説で人を熱狂させ、行動に駆り立てるのは、あの力強い声と動作、確信を感じさせる表情が大きな要因です。日本においても、小泉純一郎氏が首相だった頃、まっすぐ前を向いた視線と強い眼力と張り上げた声で説得力を作り出していたのは記憶の新しいところでしょう。


逆に「言語」と「非言語」が不一致になると、伝達力は弱まります。


国会演説で政治家が用意されたペーパーに目を落としたまま、「これこそが日本が早急に対処しなければならない問題なのです」と棒読みしても、メッセージは聞き手の心に響きません。


そして、多くの場合、「非言語メッセージ」は「言語メッセージ」をコントロールする役割を担います。


例えばあなたが、デスクからコーヒーカップを落として割ってしまったとしましょう。


隣の人が「本当におっちょこちょいだな〜」と優しい声で言ったら、伝わるメッセージは「いいよ。大丈夫だよ」でしょう。


大声で「本当におっちょこちょいだな!」と声を荒げたら、伝わるメッセージは「勘弁してくれよ!」でしょう。


つまり、言語メッセージの本当の意味は、多くの場合非言語メッセージが規定しているのです。


「言語メッセージ」と「非言語メッセージ」の不一致は、伝達力を弱めるだけでなく深刻な問題を引き起こす場合があrます。


これは文化人類学者のグレゴリー・ベイトソンが定義したダブルバインド(二重拘束)というコミュニケーションの形態で、以下の条件が満たされた時に成立します。


①言語メッセージによる命令
②言語メッセージと矛盾する非言語メッセージ
③矛盾を指摘したり、状況から逃れたりすることを禁止するメッセージ


あなたが、上司から「期待しているから頑張ってくれよ」と言われたとしましょう。


これが①の言語メッセージです。


同時に上司は、意地悪そうな目をして皮肉に笑いを浮かべていたとしましょう。「おまえには何にも期待していないから、余計なことはするな」と言っているように感じられます。


これが②の非言語メッセージです。


それに対して、「どうしてそんな皮肉を言うんですか?」と抗議したら、「難癖つけるのか? 偉そうだな!」と怒られそうです。


これが③のメッセージです。


ベイトソンは、ダブルバインドに繰り返しさらされた人は、精神を病む可能性があると述べました。


最近は職場のメンタルヘルスが、企業のリスクのひとつとして対処されていますが、コミュニケーションによりこのような問題が発生する恐れもあるのです。


ダブルバインドは極端な例ですが、非言語メッセージが言語メッセージと一致していないと、予期せぬ事を相手に伝えてしまいかねません。


逆にこれを一致させると、あなたの影響力ははるかに強まります。


本書のフレーズも表情や声とマッチした時に最大の効果を生みますので、ここぞという時には鏡を見て練習してから使ってください。