第2024冊目 プレゼンテーションの教科書 増補版 [単行本] 脇山 真治 (著), 日経デザイン (編集)

プレゼンテーションの教科書 増補版

プレゼンテーションの教科書 増補版

  • プレゼンテーションの自己管理による上達


車の運転がうまくなりたければ、運転の機会を増やす以外にない。デッサンの上達にはデッサンを描きつづけることだ。しかし、ものごとの上達には本人の努力もさることながら、到達目標の設定や適切な指導、実行した結果に対する検証など、システムとして機能しなければ時間を費やしただけの成果を期待するのは難しい。プレゼンテーションも同様に実施の機会を多くもち、場数を踏むことでノウハウを体得しながら、時牛津や表現が洗練されていくものである。この実施訓練ともいえる本番による成果が次のプレゼンテーションに活かされるように、PDCA前地面とを活用した継続的な管理トレーニングをすすめたい。


PDCA前地面ととは、広義の品質管理の方法論として提唱されており、P(Plan:計画と目標世体)、D(Do;実行・実施)、C(Check:点検と是正措置)、A(Action:指導層による見直し)を、継続的に行うことによって、プロジェクトを全体の完成度を段階的に高めていこうという作業である。PDCAPDCAPDCA→とくり返し実施することになるため、これをPDCAマネジメント・サイクルという。プレゼンテーションに適用すると次のようになるだろう。


P:Plan プレゼンテーションの目標を設定して実施計画をたてる。本書もまた、プレゼンテーション全体を構成するうえでPlanに注目しているが、この訓練の段階ではできるだけ絞り込んだ具体的目標を設定して計画をスタートさせよう。たとえば「視覚資料を充実させる」、「原稿に頼ることを控える」、「アイコンタクトを徹底する」など単純な目標でよい。


プレゼンテーションを成功させるという総合目標は、どの場合でも当たり前の目標で、ここでいうPlan:計画と目標設定は特に注力すべき課題で、上達管理を継続的に行うために必要な支援目標ともいえるものだ。


D:Do 実行はプレゼンテーションの実施だ。Planの設定目標の到達度を確認するなど、後の自己分析を行うために冷静な観察をともなった実施がのぞましい。ビジネス・プレゼンテーションで仲間が同席するときは、客観的な観察に強力してほしいところだ。プレゼンテーションに対してはいつも全力で望むにしても、PDCAマネジメント・サイクルにのせる場合は、意識して設定目標をクリアすべく実行したい。


C:Check プレゼンテーションに成功すれば、この点検・検証はおろそかになりがちだ。しかしステップアップのためには、プレゼンテーションの成否にかからわず、できる限り緻密で厳しいチーム内検証や自己検証をやってほしい。当初の目標に対する達成度や問題点、全般的な指摘事項など検証の対象となる事項は数多くあるはずである。この議論の中から、課題の抽出や目標の修正などの進展が生まれる。


A:Action プレゼンテーションの経験や知識が豊富なチームリーダー格の人が統括する。その結果、目標の修正、新規の課題の設定、プレゼンターの改善点などが示され、次のPDCAサイクルを見据えた取り組みの指針が明らかになる。実際にはプレゼンテーションの指導をゆだねられる人物がいないことの方が多いだろうから、便宜的には点検・検証を行ったメンバーでこの作業に取り組むのが現実的だ。同じメンバーとはいえ、CとAの作業を明確に区分してほしい。


PDCAマネジメント・サイクルはこれで最初のサイクルが一巡する。目標の修正や新たな課題は、次の計画段階で新たな目標として設定しなおし、再び実施や検証が行われる。これらを継続的に行い、作業を蓄積することによって、プレゼンテーションの課題をクリアしながらスキルアップにつなげていくのが、PDCAのねらいである。


広く品質管理分野で行われているPDCAマネジメント・サイクルにはそれぞれの書式があるが、ここではあまり形式にとらわれる必要はない。課題や検証事項などを正確に記録の残せばよい。記録と実施の蓄積は、プレゼンターにとってはノウハウの確認であり、チームにとっては貴重な財産となる。


PDCAマネジメント・サイクルの要点は、気負わず長期的な視点で継続させることである。単純で具体的な目標設定を行うのもそのためである。