第1999冊目 PRESIDENT (プレジデント) 2013年 8/12号

プレジデント2014年6/16号

プレジデント2014年6/16号


  • 社内で目の前の仕事に集中しているか――木暮太一


自分の価値を高めるためには、自主練を終えて本業の時間が始まったら、それに全精力を注ぐことが大切だ。


最近、ノドマという言葉が一種のブームとなった観があり、特に若い世代で簡単に独立起業ができると考えている人が多いように思う。また、本業を蔑ろにして、投資や資産運用に血道をあげる人も多くなっている。しかし残念ながら、仕事の最中に起業の夢を見たり、給与の安さを投資でリカバリーしようと目論んだりするような人材に、自らの価値を高めることはできない。


なぜなら、本業の最中に起業や投資のことを考えるのは、現実から目を逸らすための逃避行為でしかないからだ。『○○するだけで人生が変わる』や『××で一億円稼ぐ方法』といったベストセラーを読んでも、また翌週には同じような『△△だけで売上一〇〇倍』といった本を読んでいるものである。当たり前だが、現実逃避しても現実は何も変わらないのである。


人間が大きくなろうと思ったら、目の前のことに全力で取り組む以外に方法はない。そして、たとえ潰れそうな会社にいるとしても、目の前の仕事に全力で集中すれば、そこから学べるものはたくさんある。潰れそうな会社は、平穏無事な会社では絶対に勉強できないことを経験できる、貴重な学びの場でもあるのだ。


そして、矛盾することを言うようだが、会社を一歩出たら会社のことはきれいさっぱり忘れるべきである。新橋当たりの居酒屋で上司や部下の悪口の言ってみたところで、自分の価値は一グラムも増えはしない。


終身雇用制度は確実に崩壊しつつあるし、いま乗っている船がいつ沈没するかは誰にも予測できない時代なのだ。乗っている船が大企業だろうと中小企業だろうと、いまや事情は変わらない。そういう時代に生きていて、いざ船が沈没するときになって、自前の救命胴衣を持っていないというのでは、自分の人生に対して無責任だ。社内では目の前の仕事に集中し、一歩社を出たら、未来に備える勉強に集中する。


こうした切り替えは、結果的に地力を高めることに繋がる。いざ転職という際のあなたの相場は、居酒屋で管を巻いている人々よりもはるかに高くなっているはずである。