第1951冊目 PRESIDENT (プレジデント) 2013年 12/16号 [雑誌]
PRESIDENT (プレジデント) 2013年 12/16号 [雑誌]
- 出版社/メーカー: プレジデント社
- 発売日: 2013/11/25
- メディア: 雑誌
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パワーポイントに頼ってはダメ
プレゼンテーション(プレゼン)には強い訴求力があります。たとえば、アップル社の製品がどれだけすばらしくても、スティーブ・ジョブズにスピーチの才がなければ、世界中のユーザーをあれだけ熱狂させることはできなかったでしょう。
プレゼンには中身(コンテンツ)と伝え方(デリバリー)の画面があります。内容が完璧であっても、伝え方に問題があれば、聞く人の心には響きません。デリバリーのポイントには、「言葉遣い」「目線」「間の取り方」「声」「体の使い方」などがありますが、最も大切なのは「心」です。話し手の心のあり方が、すべての要素に影響します。
たとえば「いまからプレゼンをしたいと思います」など、確定していることにまで「と思います」とつける人がいます。あるいは「私はですね」というように、語尾にすべて「ですね」をつける。物事をはっきり断定せず、「〜である、と」「〜みたいな」といった言い方をする。これらはすべて、防衛心理の表れです。平たく言えば、自分の言葉の責任を取りたくないのです。そんな心構えでは、信頼が得られるはずがありません。
プレゼンでは、聞き手の一人ひとりとコミュニケーションを取ることが大切です。一方通行であってはいけません。そのためにはまず、相手の目をしっかり見ること。登壇したら、心の中で「聞いてくださってありがとうございます」と言いながら、一人ひとりと目を合わせましょう。こうしたマインドセットだけでも、プレゼンの出来がまるで違ってきます。
適切な「間」を取ることも大切です。間は、聞き手の心の声を聞く時間。プレゼン中、黙っているのが不安で、早口でしゃべり続ける人がいますが、もっと間を取って、聞き手の表情を確かめてください。よくわからない様子なら、「言葉が足りませんでした」とフォローし、飽きているようなら、「このあたりはすでにご承知だと思います」と説明を切り上げる。相手の反応に合わせて話し方を変えるのも、コミュニケーションです。一人で勝ってに話していると、聞き手は興味を失ってしまいます。
気持ちをしっかり伝えるために、声は顔全体に響かせます。鼻にしか響かせないモゴモゴした話し方では、聴衆に聞き取れません。呼吸は深く。浅いと息が続かなくなり、女子高生のように「わたしがあ」「〜でぇ」と、語尾が大きく高くなります。
滑舌が悪く、子音をはっきり発音しないとか、幼児のような舌足らずな話し方をする人もいます。これらについては、舌のトレーニングで改善できます。
プレゼン中は、本人が無意識にとっている姿勢や手の置き方なども、聞き手にはすべてがメッセージになります。話し方だけでなく、体の使い方にも気をつけましょう。ほとんどの人は姿勢が後傾しています。足首と足の付け根、肩、そして耳が一直線に揃うのが正しい姿勢です。立つときは、重心を真ん中に。顔は聴衆にまっすぐ向け。手は自然な感じで両脇に垂らします。総じて言えるのは、日本ではこうしたプレゼンの基礎を知らない人が多すぎるということです。
いまはパワーポイントなどのツールに頼る人が多いのですがプレゼンはあくまでスピーチがメーン。徹夜で資料を用意し、「あとはこの通りしゃべればなんとかなるだろう」と考えるのでは、意識が逆です。
資料はしょせん、過去につくったもの。大事なのは、いまプレゼンの場で話しているあなた自身です。この場にいる自分が目の前にいる一人ひとりの信頼を勝ち取ってゆく。その意識を強く持てば、役員の心を動かすこともできるでしょう。