第1383冊目 カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本) [単行本] オリビア・フォックス・カバン (著), 矢羽野 薫 (翻訳)


カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)

カリスマは誰でもなれる (ノンフィクション単行本)


権威のカリスマ――地位と自信


権威のカリスマは、おそらく最も強力なスタイルだろう。権威に服従するという人間の本能は、バランスを無視して膨れ上がるときもあり、いい方向にも悪い方向にも進む。コリン・パウエルダライ・ラマは権威のカリスマの典型だが、スターリンムッソリーニもそうだった。権威に対する反応は、私たちの脳の奥底に組み込まれている。


権威のカリスマを持つ人は、必ずしも周囲から好かれているわけではない。マイケル・ジョーダンシカゴ・ブルズ時代の全盛期に、自分にとって好かれることより、リーダーになることのほうがはるかに大切だと語った。話を聞いた記者は、次のように書いている。「彼はチームメイトを苛立たせ、憤慨させるときもある。それでも彼はカリスマを発揮して、チーム全体のプレーのレベルを引き上げている」


人はどこにカリスマを感じるか


権威のカリスマは主もに、自分のパワーを周囲に感じさせる能力にもとづいている。つまり、この人は自分たちの世界を変える力を持っていると、人々に感じさせることができるかどうかだ。権威のカリスマを発揮する基準は大きく4つ。ボディランゲージ、外見、肩書き、周囲の反応だ。


最初に考える基準はボディランゲージだ。その人物が他人や周りの世界に影響を与えるようなパワーを持っているという自信が、ボディランゲージに表れているだろうか。


次に、外見に注目する。人間は地位を気にして、地位に感動する生き物だ。この本能的な反応が、生き延びる武器となる。地位の高い人は、私たちを助ける力も傷つける力も持っている。生き延びるためには、自分が序列の中でどこにいるかを知らなければならず、他人の地位を判断するあらゆる手がかりにきわめて敏感になる。


そこで服装は、地位を判断する強力な手がかりとなる。私たちは地位を通じてその人の潜在的なパワーを、パワーを通じて権威のカリスマを判断する。たとえば、専門知識(医師の白衣)や権力(軍人や警察官の制服)を象徴する服装。高価な服など、社会的地位や成功を象徴するものには、とくに注目する。ニューヨーク市で行われたある事件で、横断歩道のない道路を横断する人が高価な服を着ている場合と普段着を着ている場合では、前者のほうが後に続く人は多かった。


別の実験では、ショッピングモールでアンケートを行う調査員に、ブランドのロゴ入りのセーターとロゴなしのセーターを着せた。すると、ロゴ入りの調査員のアンケートには52%の人が回答を応じたのに対し、ロゴなしの調査員は13%だった。高価そうなロゴは、慈善精神にも影響を及ぼす。明らかにブランドものとわかるマークのついたシャツを着たグループは、マークのついていないシャツを着たグループ(それ以外の条件はすべて同じ)の2倍近い寄付金を集めたのだ。


権威のカリスマを評価する最後の基準は、その人の肩書きと周囲の反応だ。これら2つの要素は多くの手がかりをもたらすが、ボディランゲージと外見ほど重要ではない。肩書きは立派だが、周囲からほとんど尊敬されていない人がいると、私たちは本能的に、肩書きは低いけれど大いに尊敬されている人に比べて真のパワーを持っていないのだろうと理解する。


これらの基準にもとづく評価は、全体でも1秒足らずでできるが、肝心なのはその順番だ。複数の基準に矛盾がある場合、人は先に判断した基準を信頼しやすい。繰り返しになるが、ボディランゲージはカリスマを示すあらゆる手がかりの中で最も優先される。ほかのすべての手がかりは問題がなくても、不安を示すボディランゲージがあれば、権威のカリスマのあらゆる潜在能力がむしばまれる。反対に、ボディランゲージさえしっかりしていれば、権威のカリスマはある程度の信頼を勝ち得るだろう。


権威のカリスマを高める


権威のカリスマを身につけるためには、何よりも地位と自信を示すことによって、パワーを発散しなければならない。したがって、地位と自信にとって最も重要な2つの要件が、最も大きな影響力を持つ。すなわち、ボディランゲージと外見だ。


ボディランゲージが権威のカリスマに及ぼす影響はかなり大きいため、その瞬間にどれだけ自信を感じているかがカリスマのレベルを決める。そこで、イメージトレーニング、体が心を変えるテクニック、準備運動(5章で説明)を使い、自信を持てる精神状態になろう。


ボディランゲージにパワーと自信を反映させえるためには、足を広げて立つなど空間を占めるような体勢を取り、言葉を使わない確認(たとえば、うなずく回数」を減らして、そわそわするそぶりをやめること。話す量を減らしてゆっくりしゃべることや、文章を区切るタイミングとテクニック、イントネーションの調整も必要だ。ボディランゲージをとおしてパワーを発散する具体的な方法は9章で説明する。


外見については、権威を醸しだす簡単な方法として、高価そうに見える服や、高い地位をうかがわせるような服を選ぶのもいい。


カリスマを身につけたら


権威のカリスマがあると、周りがあなたの言葉に耳を傾けるようになり、従う人も多いだろう。ただし、これには深刻な副作用もある。他人の批判的な思考を抑制すること、フィードバックを引き出せないために必要な情報を得にくいこと、傲慢に見られやすいことだ。


ここで役に立つのが、誠意を醸しだすテクニックだ。誠意は、傲慢で威圧的な人だと思われるリスクを減らすだけでない。高い地位があると思われている人が誠意を示せば、その価値ははるかに高くなる。地位の低い人があなたを喜ばせようとしても、親切な気持ちは感じるかもしれないが、その熱心さを高く評価するとはかぎらない。地位の低い人は多くのことをしてくれるわけではないからだ。それに対し、地位の高い有力者が私たちに注意と誠意を向けてくれると胸が躍る。彼は私たちのために山も動かせる人なのだから。