第1107冊目  すごい説得力: 論理的に考え、わかりやすく伝える話し方 (知的生きかた文庫) [文庫]太田 龍樹 (著)


「説得」とは、「影響録の行使」に他ならない。


このことは、すでに述べました。


あなた自身の印象は、説得の結果に大きく影響します。


モントクレア州立大学心理学部教授のポール・ローチャーは、顔をちらりと一瞬見せる程度――約0・1秒でも、第一印象が形成されるのに十分であるという研究結果を出しました。


一瞬であなた自身の印象が決まってしまう――。


恐ろしいと思いませんか。


私の本業であるコンサルティング営業は、まさに説得の仕事です。


そこで想像してみてください。


もし、私が能面のように冷たい表情をしていたら――。


私はあなたを説得することができるでしょうか?


できるわけがありません。


態度にしてもそうです。


説得を試みる立場の人間が、不遜な態度で臨んだり、そこまでへりくだらなくてもよいのに、というくらい下手に出たりすると、相手からの信頼は得られません。


また、服装や持ち物が、あまりにも派手だったり、奇抜だったりすると、内面までチャラチャラしていると思われかねません。説得する前に、大きなハンデを背負ってしまうようなものです。


話し方や言葉遣いにしても同じです。


たとえば、あなたの商談相手が、今の若者言葉のように語尾上がりで話しかけてきたら、その人を頼りに思えるでしょうか?


または、口をついて出てくるのが「ええと……」「あの……」「その……」「たぶん……」といった、いかにも自信なさげな言葉を使い、曖昧な表現ばかりする人を頼りになる人と思えるでしょうか?


実際、話し手が説得中にためらうような表現を多用するほど、相手の信頼度は低くなるという研究結果が出ています。


さらに、相手との関係性を無視した、ため口のような言葉遣いをしようものなら、信用されるどころか、怒られて当然です。


このように、話し方のクセ、外見やしぐさ、振る舞いの悪印象によって、説得する前に結果が決まってしまう場合もあります。逆にいうと、表情・態度・服装・持ち物・話し方・言葉遣いなどをちょっと見直すだけで、説得の成果は格段に違ってくるのです。


あなたの姿を視界に入れたとき。


あなたの言葉をはじめて耳にしたとき。


相手がどのような印象を受けるかを常に考えることが大切です。


そして、それを説得の場面に活用しましょう。


その方法を、これから紹介します。