第3989冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

 

-「できている」と思い込み部下

 

実は十分に業務がこなせていないのに、「できている」と思い込んでいる職員と向き合う際には、その職員は何ができていて、何ができていないのか、整理し見極める作業から始める必要がある。あいまいなとらえ方では、業務のレベルアップにつながるような的を得たアドバイスができないからだ。指導する立場にあるリーダー職員は、まず、この重要なポイントをしっかりと押さえておかなければならない。

 

リストアップ後は、優先順位を決めて、「これは何をおいてもできるようになってほしい」業務に関して、どのレベルアップまでを求めるのか、ゴールを示す作業に取りかかる。

 

これは極めて重要な取り組みだ。なぜなら、「できている」と思い込んでしまう職員の多くは、ゴールの設定を間違っているケースが多いからだ。何が、どのように、どこまでできれば、「できている」と胸を張れるのかわかっていないことが少なくないからである。

 

もちろん、事前に把握するといっても限界はある。その場合も、可能な限り、情報収集し、あらかじめ、どの部分ができていないのか目安をつけるよう努力する。

 

そのうで、本人と向き合い、話し合いをする。本人の見解に耳を傾ける。「できていない」と思われる業務を、本人が「できている」という認識を示している場合は、状況を詳しく確認する。具体的にどのような手順や方法で、業務を行っているのか説明してもらう。介護業務などの場合は、実際に“演じて”もらう。リーダー職員を利用者に見たてて、いつもの手順や方法を見せてもらう。不十分な点にリーダーが気づいた場合は次の手順で修正する。

 

①不十分な業務に関して正しい手順と方法を手本として見せる。

②見せたうえで、本人にロールプレイの形で実演してもらう。

③手順や方法に問題がある場合は、ピンポイントに修正点を指摘する。同時にどこをどう修正するか、手本を示しながら教える。

④十分なレベルができるようになるまでチャレンジしてもらう。

⑤できるようになったことを確認し、終了とする。

 

このような取り組みを通して、着実に業務が「できる」業態になるようサポートしていく。

 

事務系の業務に関しても手順は同じだ。連絡ノートの書き方が不十分な場合は、まずお手本を見せる。続いて、本人に書いてもらう。不十分なところは指摘し、修正するようアドバイスする。コツをつかみ、他の人にも伝わる連絡ノートが書けるようになるまで、根気強く指導する。

 

指導の際のポイントは、まさに、この根気強くがポイント。急がすと相手は焦る。焦ると、うまくできることも、できなくなる。自身喪失の状態になり、学ぼうという気力がうせてしまう場合もある。そうならないよう、「ゆっくりじっくり」を心がける。

 

指導に当たる際に、最も重要なのは、「どうしてもこんなに簡単なことができないのか」という姿勢を絶対に示さないという点。少しでもその姿勢を見せると、相手は責められていると感じる。「育てたい」という指導者(リーダー職員)の思いが素直に受け止められなくなる。成長の妨げとなるので、「どうしてこんなこともできないのか」という姿勢は厳に慎まなければならない。