第3979冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

-健全なる危機意識をもつ人

 

福祉の職場で働くかぎり、リスクとは無縁ではない。好む好まざるかにかからわず、必ず、リスクに向き合うことになる。

 

利用者が今、保持している力をこれからも失わないようにサポートするには、リスクとは向き合わなければならない。大切なのは、リスクに対する目配りを十分にしながら、保持する力を存分に発揮できるようサポートしていくことである。万が一、うまくいかないことがあったとしても、リスクへの対応が十分になされていれば、本人がケガをしたたり、命の意見にさらされる事態は回避できる。リスクを踏まえた対応がなされていれば、再チャレンジに向けた取り組みにスムーズに移行できる。

 

しかし、リスクに適切に向かう姿勢を身につけるのは容易ではない。油断をすると、危ういと思われることはすべて避ける。「事なかれ主義」の罠に陥ってしまう。危ないから、何もさせない。危ないからチャレンジなんてとんでもない。そんな罠に落ちってしまうケースだ。

 

だからこそ、リーダー職員は強く意識しなければならない。健全なる危機意識をもち、事項防止に力を注ぐと同時に、利用者の成長や能力発揮に貢献できる職員の育成に努めていかなければならない。

 

危機意識を共有する職員集団を作りあげる際に、有効なのが「職場内ハザードマップ」作成の取り組みだ。各部署の職員に、部署ごとに、マップ作成を行うよう指示を出す。自分たちが働く職場のなかに、ハザード(著しい危険)をもたらすリスクはないか、個人ではなくチームで洗い出す作業に取り組んでもらうのだ。

 

「職場内ハザードマップ」を作る際には、次の三つの視点から、部署内(ユニット内)にリスクを洗い出す。

 

第一は、「場所」である。これまで、部署内で作成した事故や「ヒヤリ・ハット経験」をベースとして、危うい場所のリストアップ作業に取りかかる。例えば、特定の居室の前の廊下が滑りやすい、つま先が上がりにくい利用者はつま先部分が引っかかって転倒しやすい、などといったリスクをリストアップしていく。

 

第二は、「時間」である。特定の危うい出来事が発生する時間をリストアップしていく。朝食の時間帯には何らかの事態が発生しやすい。昼食後の時間に何らかの問題が発生しやすい、といった時間軸からみたリスクの洗い出しだ。

 

第三は、「状況」である。どのような状況になると、危うい出来後が発生するか。何らかのトラブルが発生するか、についてピックアップしていく。

 

それを、見える形で書き出していく。「場所」「時間」「状況」に三つの要素を考慮したリスクを一目でわかるように書き入れていく。例えば、「昼食後の時間、Bユニット内のリビングで、A氏とB氏が顔を合わせると口論になりやすい」といったイメージである。

 

こうしたリスクを書き出せば、防止に向けた取り組みも、的を得たものが作成できる。リスクのイメージが明確なので、すぐに実践に移せる有効性の高い防止策が立案しやすくなる。