第3976冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

-相手が心地よいと感じるあいさつ、言動、所作が示せる人

 

職場に明るさと元気をもたらし、ともに働く人が気持ちよく業務がこなせる職場風土を作り出す重要な第一歩となるのが、あいさつである。あいさつがもたらす効果は、想像以上に大きい。どのようなあいさつをするかによって、明るい一日の幕開けになる場合もあれば、気が重い一日の始まりになる場合もある。

 

人がどのような所作であいさつをするか。この点に提供を及ぼす要因はたくさんあるが、最も大きな要因となるのは生活習慣だ。人は、人生のなかで、さまざまな集団、組織に所属する。家族に始まり、保育園・幼稚園、小学校、中学校、そして、義務教育の学校教育機会などへの所属を経験する。現在の仕事に就く前に、他の業界で正社員あるいは非常勤職員として働いた経験、町内会をはじめとした地域組織への参加、職場以外の団体やサークルなどに所属した経験があるかもしれない。

 

これらの経験が「どんな態度や姿勢であいさつをするか」に影響を及ぼす要素となっている。

 

注目すべきは、長い年月をかけて、生活習慣の一つとして身につけたあいさつの際の姿勢や態度が、現在の職場のなかで、望ましいものになっているとは限らないという点だ。福祉の職場を訪ねると、あいさつという基本動作が十分にできていない職員に出会うケースが少なくない。

 

もしリーダー職員として働く職場がこの状況にあるとするならば、即座に行動を開始しなければならない。万が一、初任者研修に、あいさつについて明確に盛り込まれていない場合は、可及的速やかにプログラムのなかに組み入れるようにしよう。

 

新たな職場で働き始めるというのは、新卒者はいうまでもなく、既卒者(あるいは社会人としての経験が長い人)にとっても、重要な転機になる。この大切な機会を見逃してはいけない。採用後には、気持ちよく感じるあいさつとはどのようなものか、どのような動作、所作、作法が必要とされるか、教えるようにする。もちろん、よき手本を、リーダー職員が日々の業務のなかで、見せ続けなければならないのはいうまでもない。

 

すでに働いている職員が、適切なあいさつができていない場合は、組織全体で、あいさつの大切さを確認する。朝のミーティングなどの時間を利用して、お互いに目を合わせ、周りの職員にとびきりの笑顔であいさつするよう指示を出すもの有効な方法だ。大事なのは、個人にも、組織にも、よき習慣となるよう働きかけ、定着させるように、リーダー職員が率先垂範に努めることである。

 

同時に、職員に明示してほしいのは、どのような言動が他の職員を不安にするかという点だ。ともに働く職員を不安にさせたり、活気や明るさを奪ったりしないようにするために、決して示してはいけない言動を具体例にあげて示すようにする。「他の職員を傷つけぬよう自分の言動に注意しましょう」と部下・後輩に働きかけるだけでは、効果はほとんどない。「よし、わかった。これからは気をつけよう」といった表面的な理解で終わる。

 

そうならならいようにするために、どのような言動が人を傷つける可能性があるのか、明示することが必要になる。