第3975冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

①法人、事業所が掲げる理念、運営方針を理解し、達成に向けて行動を起こせる人

 

法人、事業所が掲げる理念や運営方針の理解は、どのような業界、業種、職種で働こうとも、必ず求められる要素の一つだ。組織(法人・事業者)が掲げる理念や運営方針に関しては、採用後、速やかに教えていかなければならない。厳密にいえば、求人から採用に至るプロセスのなかでも求職者に伝えるよう努めなければならない。会社説明の場はいうまでもなく、採用面接の場面でも、どのような理念のもとに運営されているのかについては何らかの形で言及、説明する必要がある。

 

新任職員向けに行われる研修のなかで、沿革についても丹念な説明が必要だ。どのような経緯で発足したのか。創業者はどのような理念、ビジョンを掲げていたのか。その後、どのような発展を遂げ、現在、どのような状況になっているか。今後、どのような方向に進もうとしているのか。説明を行ったうえで、今、働き始めた職員に求める姿勢や行動を伝えていく。

 

すでに働いている他の職員にも、定期的に、組織の沿革および発展の歴史を確認する機会を提供する。こうした取り組みが、そもそも自分たちは何をするために働いているのか、原点をあらためて確認することにつながる。日々の業務を積み重ねるなかで、目先の業務ばかりに心が奪われるようになったり自分をリフレッシュすることにもつながる。法人が掲げる理念を共有するものとして、自分は何をすべきかを再確認できるし、あるべき方向に向けて行動を起こせるようになる。

 

法人が掲げる理念を職場全体(事業所全体)で共有する試みの一つとして、皆で理念を唱和するという取り組みを見かけることがある。有効な方法であるが、ただ唱和するだけでは、勝因は、“飽き”てしまい、心ここにあらずの状況になりやすい。この状況を避けるうえで有効なのは、理念を唱えた後、その実現に向けて何をするのか、職員に語ってもらうという取り組みだ。ある法人では、何名かの職員が、その実現に向けて、今日、自分は何をするか、自分がオリジナルで考えた行動指針を唱えるという取り組みを行っている。

 

例えば、「常に利用者の立場にたち、心を込めた介護を行います」という理念を受け、「障子の場面がご利用者一人ひとりにとって、ゆったりとしたくつろぎとコミュニケーションの場になるよう努力します」と行動指針を唱える。このように宣言すると、本人はもちろん、他の職員の意識も高まる。この指針に向けた行動が取られるようになる。