第3960冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

安心感の醸成が職員成長と業務レベル向上の原動力となる

 

こうした取り組みに着手するのは真の意味でのリーダーになるためである。ただし、目的はそれだけではない。部下・後輩として働く職員が安心して働けるチーム環境(組織環境)を築きあげるためである。「進むべき方向がよくわからない」「安心して相談できる人がいない」「ついていきたいと思う人がいない」「相互に信頼しあえる人間関係ができていない」という職場環境では、人は安心して働くことができない。不安で心が覆いつくされ、思考力や判断力が十分に機能しなくなる。いつ、何を、どんな手順や段取りで、どのような形で行っていくのは、考えを巡らすことが困難になる。もてる能力を孫文に発揮できず、自己嫌悪に陥ったり、自身喪失状態に陥ったりする。不安感がチーム内に蔓延し、多くの職員が力を発揮できない環境になれば、事業所全体がレベル低下の状況に陥っていく。

 

“なりたいリーダー”となるための取り組み、そして、部下・後輩が願うリーダーとなるための取り組みに、今、リーダーシップを発揮する立場にあるすべての人が着実にとりかかっていかねばならない理由はまさにここにある。誰もが安心して自己の能力を発揮する環境を作りあげるために、可及的速やかに、“なりたいリーダー”となるための行動を起こすことが求められているのである。なぜなら、自らが責任をもつチーム・部署・組織のなかに、心の底から実感できる安心感をもたらすことが、リーダーが果たすべき最も重要な使命の一つだと判断できるからだ。

 

 

目指すべき職員のイメージ

①自分の考えだけに固執せず、他者の考えを柔軟に受け止める(他者の意見に真剣に耳を傾け需要する姿勢を示す)

 

②他者からの指摘に謙虚に耳を傾ける(たとえ注意されるようなことがあったとしても、反発するような姿勢は示さず、謙虚かつ冷静に指摘を受け止める姿勢をもつ)

 

③常に正しい業務の遂行を心がけ、数年後には職業人としての実績を胸を張って示せるようになる(実績を着実にあげ、職業人としての揺ぎなき自信を身につけるよう努力邁進する。新しい提案や変化に向けた取り組みが他者から示されても、前向きな姿勢で受け止められる職員になる)

 

④チャレンジ精神・向上心をもち続ける

(ワンランク上の業務にチャレンジす、もっとワクワクする業務を作り出すという姿勢をもって働く)

 

⑤限られた時間のなかで、どのような工夫をすれば、いいパフォーマンスができるか、常に時間を有効活用する姿勢をもって業務に当たる。(「忙しい」「時間がない」「人が足りない」を言い訳にして、業務レベルの低下に陥るような職員にはならない)

 

⑥わからないことをそままにせず、常に新たな知識やスキルを身につける姿勢をもって働く(福祉系の月刊誌には必ず目を通す。わからないことがあったら、すぐに調べる習慣を身につける)

 

⑦業務改善への取り組みに積極的に参加し、常にレベルアップに貢献する職員になるという意識をもって働く。(各チーム、各部署が取り組む業務改善活動には積極的に参加する)

 

⑧法人が掲げる基本理念、運営方針、ルールを順守した業務姿勢を貫く。(権利擁護と利用者本位サービス、職業倫理に根ざした業務を行っていく)

 

⑨感情をコントロールしながら働く(プライベートな感情を職場のなかに持ち込まない。常に、いい表情で働くようにする。利用者に安心感を与えるような表情、態度で働く)

 

⑩利用者にとってどのような介護、支援がベストであるかを考えながら業務に取り組む。(利用者の思い、ニーズ、ペースなどを最大限尊重した介護、支援を行う)