第3901冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

-共感力

 

共感力とは、相手の視点から物事をとらえ、考える力だ。この力は、利用者や家族に対して発揮されなければならないし、部下・後輩に対しても示さなければならない。チームリーダー、主任、中間管理職の立場であれば、上司に対しても発揮することが求められる。

 

共感力を発揮するには、専門的な知識が求められる。認知症、知的障害、発達障害精神障害がある人の立場にたつためには、認知症や各種障害に対する的確かつ十分な知識が必要になる。支援した経験があるだけでは、相手の立場にたつことはできない。支援する側からとらえた利用者像に過ぎないからだ。

 

部下、後輩、上司に対する共感に関しては、今、その人はどのような役割を担っているのか、どのような使命を果たすことが求められているのかを理解することも必要だ。それがわかっていなければ、もし自分が同じような役割や使命を担う立場になるとどのような心理状況になるか、思いを巡らすことはできない。相手の立場を把握できなければ、適切かつ的確に、相手をサポートすることも困難になる。

 

共感を言葉だけに終わらせず、行動へと移すには、専門性を磨き、ともに働くすべての職種・職階職員の役割と使命に関する理解を深める取り組みが必要となる。

 

 

スタッフ・エンパワメント力

 

スタッフ・エンパワメントとは、「職員の成長や能力の妨げる阻害要因を特定し、要因の除去に向けて必要かつ適切な対応策を講じて、成長をサポートしていく一連の活動」を指す。

 

この力を発揮するためには、部下が、職員として「何を十分に成し遂げているのか」「何を成し遂げていないか」、把握する取り組みが必要となる。成し遂げられていない事柄に関しては、原因を精査したうえで、成し遂げられるようサポートしていく。

 

例えば、行動障害のある利用者への支援が十分にできていない状況があり、その原因が、行き当たりばったりの対応でよしとする甘い姿勢にあったとする。この場合、不適切との訴えがなされる可能性がある点を指摘し、「このままではいけない」という危機感を職場全体で共有するよう働きかける。

 

続いて、行動障害関連の書籍を整備し、自己学習ができるよう環境整備する。外部の研修に派遣し、学んだことを職場に持ち帰ってもらう。他の職員への伝達研修を行ってもらい知識の共有を図る。こうした一連の取り組みを通して、職員のエンパワメントを着実に図っていく。