第3890冊目 福祉リーダーの強化書: どうすればぶれない上司・先輩になれるか 久田 則夫 (著)

 

 

 

 

他者からの耳が痛い指摘、批判の声、注意に対して、冷静かつ謙虚に向き合える人

 

ともに働く仲間からの意見や指摘は、よき職業人を目指す人にとっては、大きな宝物となる。自分が見落としていた部分を気づかせてくれる機会を提供してくれるからだ。

 

もちろん、他者からの指摘には、“耳が痛い”ものも含まれる。利用者への直接介助に携わる自分自身の言動が、「利用者の尊厳を大切にしていない」「利用者のプライドを傷つける接し方となっている」といった指摘がなされることがある

 

 

または、意図的ではないのだが、無意識のうちに苦手意識を感じる業務・利用者から逃げていたという点を、他者からストレートに指摘されるケースもある。

 

たとえつらくとも、福祉の職場でプロとして働く人は、他者からの“耳が痛い”指摘から逃げてはならない。その指摘に対して冷静かつ謙虚に向き合う姿勢を身につけなければならない。他者からの指摘は的を射ているケースが多い。権利侵害へと発展しかねない行為を、未然に指摘してくれる貴重なアドバイスとなるからだ。

 

では、どうすれば、“耳が痛い”指摘に冷静かつ謙虚に向き合える職員が育成できるだろうか。最も有効な方法は、リーダーがよき手本を見せることだ。日常の業務場面で、人の意見に真摯かつ誠意ある態度で耳を傾ける姿勢を示す。的を射ている指摘の場合は、すぐさま改善を図る。そんな姿勢を率先垂範して示すことが、部下・後輩にとっては一番のよきモデルになる。“耳が痛い”指摘に冷静に向き合う職員を育てる基盤になる。

 

 

実践研究に取り組む人(実践に学び新しい知を生み出す人)

 

職業人として誇りをもって仕事を行っていくためには、明確な実績を示すことが必要となる。

 

実績には日々の定型業務を着実にやり遂げていくことも含むが、プロとして、さらなる成長を図るのであれば、新しい何かを生み出すためのチャレンジも必要だ。

 

その重要な取り組みとなるのが、業務遂行の一連のプロセスのなかで実施する実践研究である。職員として取り組む姿勢を、より優れたものとするためのチェレンジだ。ひと言でいれば、実践を研ぎ澄まし、究める。日々行っている業務を点検、精査し、何がよき結果を生み出す要因となっているか、を検証する。同時に何がよきパフォーマンスを妨げる要因となっているか、を点検し、レベルアップに向けた教訓を明らかにしていく。教訓はレポートにまとめて、ほかの職員の前で口頭発表する。職場全体で共有できるものにして、一人だけのノウハウや知識にとどまらず、みんなでシェアする。“共有地”にしていく。

 

今、福祉の職場で求められるのは、自己のレベルアップと、福祉職員としてのアイデンティティの強化だ。社会から真の意味で一目置かれる職業領域としていくためには、今挙げたようなパフォーマンスの向上が欠かせない。そして同時に、実績や専門性を、“見える化”していく取り組みが必要とされているのである。